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Gの現状 電線・ケーブル不足

2024/01/19 群馬建設新聞

電気工事を行う上で必要不可欠な電線・ケーブルについて、新規受注が停止されるなど調達が困難な状況に陥っている。大型案件の工期の影響のほか、新型コロナウイルス感染症対策の緩和による仕事量の増加や残業規制によりメーカーでの増産が難しいことなどが要因とみられる。

資材不足は年度末に集中する工期に影響を及ぼす。これにより引き渡しや賃金の支払いが遅れるなど施工業者や資材販売会社への影響は大きなものとなる。

電線・ケーブルが正常に流通しないと能登半島地震などの災害が発生した本格的な災害復旧工事に影響を及ぼすことが危惧される。

2023年8月末から引き合いが急増したことを受け、12月に日本電線工業会が新規受注の停止などを周知する通知文を会員各社に発出し、納期に余裕を持った発注や大型案件における線種・量の早期確定など協力を呼び掛けた。

県内の電気工事業者で構成される群馬県電設協会の狩野明会長は、電線・ケーブルの不足について「メーカーが注文を受け付けてくれなくなったのは23年11月中旬ごろ。受注再開はいつになるのか見通しが立っておらず、施主やゼネコンからも施工できない理由を聞かれるなど迷惑をかけてしまっている状況」と話す。不足している要因に「熊本で進む半導体工場の建設や大阪・関西万博の工事に、メーカーはフル生産しているが間に合っていない状況と聞いている。そこに公共工事だけでなく、民間工事も含めて工期が3月に集中していることなどが影響しているのではないか」との認識を示す。

電線・ケーブル不足の回復時期について電設資材などの販売を手掛けるミツワ電機(東京都中央区)の調達部門に所属する担当者は「低圧ケーブルは例年並みに供給できてはいるが、先件名の商品手配を複数の流通業者が重複して行っているケースも多く、混乱は年度内いっぱいまで続くのではないか」との見解を述べる。

対策として、アルミ製の電線やアルミ製導体ケーブルの普及や海外製の電線の使用が考えられる。アルミ製の電線やアルミ製導体ケーブルは、東京電力などの架空送電線で使用されている。現在主流となっている銅線と比較して、アルミケーブルは銅導体のケーブルに比べて強度が低く、電気抵抗値が高いため、断線や過熱が発生しやすいというデメリットがある。また、接続部分の酸化による接触不良や腐食にも注意が必要であるが、アルミニウムを導体に使用した電力ケーブルは、軽量かつ安価であるという大きなメリットがあり、今後はこれらの問題を解消できれば普及することが見込まれる。

海外製の電線については、施主の意向があれば使用し施工する場合もあるというが、公共工事、民間工事においてはJIS規格の国内メーカーの電線を使用しているのが現状となっている。保証などの面からも導入へのハードルは高そうだ。

24年を迎え、公共工事、民間工事ともに工期が迫る中状況が打開されるのか注目される。23年は建設業において倒産の増加が目立った。すでに新型コロナウイルス感染症拡大による物価高騰などでダメージを受けている中、災害の本復旧を前に流通の正常化とともに、アルミ製の電線・アルミ製導体ケーブルの普及や海外製電線の導入などについて検討する必要がある。

【電線】

電線は導体と呼ばれる電気伝導率の高い素材を絶縁体で被覆したもので、導体については一般的に銅線が使用されている。

【ケーブル】

ケーブルは絶縁体が被覆された導体をさらにシースで保護したものをいう。

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