建設業法と公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案が9日、閣議決定し国会審議が始まる。建設業の担い手確保へ、労働者の処遇改善に向けた賃金原資の確保と下請事業者までの行き渡り、資材価格転嫁の円滑化による労務費へのしわ寄せ防止、働き方改革や現場の生産性向上を図るための措置が盛り込まれている。公布日から1年6カ月を超えない範囲で施行となるが、3カ月、6カ月を超えない間に施行となるものもある。
建設業は、他産業より賃金が低く、就労時間も長いため、担い手の確保が困難な状況にある。建設業が将来にわたって「地域の守り手」としていけるよう、時間外労働規制等にも対応しつつ、処遇改善、働き方改革、生産性向上への取り組みが求められている。
斉藤鉄夫国土交通大臣は「処遇改善と働き方改革を強力に進め、将来にわたって必要な担い手が確保できる持続可能な建設業の実現を目指す」との決意を表した。また、これらの取り組みは「発注者である企業等にとっても建設サービスの提供を今後も持続的に受けられるようにするためのもの」とし建設業だけでなく、発注者にとっても非常に重要と説明した。
改正法案の主な内容は次の通り。
【労働者の処遇改善】
▽建設業者に対して労働者の処遇確保を努力義務化。国は当該処遇確保の取り組み状況を調査・公表
▽労務費等の確保と行き渡りへ中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告。受注者と注文者の双方に著しく低い労務費等による見積り書の作成や変更依頼を禁止(違反発注者には国土交通大臣等が勧告)
▽併せて、受注者における不当に低い請負代金による契約締結を禁止
【資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止】
▽資材高騰など請負代金や工期に影響を及ぼす事象(リスク)がある場合、請負契約締結までに受注者から注文者への通知を義務化。また、資材価格変動時の請負代金等「変更方法」を契約書の記載事項として明確化
▽当該リスク発生時は、誠実に協議に応じることを注文者に努力義務化
【働き方改革と生産性向上】
▽長時間労働抑制へ、受注者による著しく短い工期による契約締結を禁止
▽ICT活用等を要件に、現場技術者の専任規制や、公共工事における施工体制台帳提出義務を合理化
▽ICT活用による現場管理の「指針」を国が作成し、特定建設業者や公共工事受注者に対し、効率的な現場管理を努力義務化