建設経済研究所は「日本経済と公共投資」の最新レポートで、2020年度から35年度までを対象とする建設投資の中長期予測を示した。結果は相当な幅があり、30年度には名目値で69・3~79兆円、実質値は57・7~64・9兆円、35年度は名目値66・4~81・1兆円、実質値で53・9~64兆円になると予測した。20年度に比べ35年度の実質値は、最大で4%程度の上昇、下方であれば12%以上の減少とした。予測の幅は将来の経済成長率に依拠しており、建設産業界の生産性向上と労働力確保の重要性は一層高まっているとしている。
予測にあたっては、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算(23年7月25日)」におけるベースラインケースと成長実現ケースの2つのシナリオで分析を実施した。35年度の名目値はベースラインで66・4~70・5兆円、成長実現は73・6~81・1兆円となった。維持・修繕を含む建設市場全体は、ベースライン83~87・3兆円、成長実現で91・4~99・2兆円となる。
実質値でみるとベースラインで53・9~57・3兆円、成長実現は58・1~64兆円となった。建設市場全体は、ベースライン67・4~70・9兆円、成長実現で72~78・2兆円となる。
35年度の実質値を22年度の見込値と比較するとベースラインで最も大きい場合でも、建設投資額、建設市場全体双方で22年度と同水準。成長実現の最も少ない場合でも建設投資額、建設市場全体双方で増加する。
政府建設投資では、さまざまな自然災害のリスクもあることから今後も国土強靱化の取り組みが進展し、公共投資に一定の額が確保されていくことが期待される。
民間に関して、民間住宅投資は幅があるものの、30年度の年間着工戸数は最少で69・6万戸、最大78・8万戸とし、35年度には最小55・7万戸、最大67・6万戸まで減少すると予測。投資額は35年度に10・11~12・89兆円と大幅な減少を見込んでいる。そのため、民間非住宅建設投資と建築補修(改装・改修)投資が今後の投資額を牽引することが期待される。
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建設経済研究所では22日に最新版となる「建設経済レポート№76」の報告会を開催する。浜離宮建設プラザ(東京都中央区)の会場とオンラインの併用で行う。申し込みは会場参加は21日午後5時、オンライン視聴は22日正午まで受け付けている。申し込み詳細はホームページで(https://www.rice.or.jp/wp-content/uploads/2024/03/8951cc358c98344adad7792b7f4037a5.pdf)。