国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所は、湯西川ダム(日光市)のハイブリッド化で水運用高度化の検討に乗り出す。対象は既設管理用発電の増強や新設発電所を想定。事前放流や洪水後の貯水位低下を考慮し、発電放流管の大きさ、ダム流入量、貯水位(発電のための活用水位)などを組み合わせる。幾つかのケースを設定して検討し、発電機仕様や設置の概算費用を算出する。国交省は早ければ2024年度にも発電事業者を公募する見通し。
水運用の高度化は、湯西川ダムの貯水量を最大限に有効活用。管理ダムの利水機能の増強や水力発電の増電が目的。ハイブリッドダムはダム本来の治水機能強化と新増電が併存。治水・利水機能の発揮とともに、ダム周辺地域に電力を供給し貢献する。国交省は湯西川ダムなど全国3ダムを対象にケーススタディを進めている。
水運用高度化検討業務は、簡易公募型(拡大型)プロポーザル方式で公告。5月上旬の連休明けにもコンサルを選定する。今後、湯西川ダム発電施設の新増設に向け発電事業者の公募関係資料の作成に役立てる。
湯西川ダムの事業スキームは商用発電による可能性を検討。民間事業者の意向把握の結果や発電規模などから商用発電が難しい場合は管理用発電のPFIの可能性を検討。PFIはBT+コンセッション方式を軸に検討する。
既設の管理発電施設は老朽度に応じ更新あるいは存置する。発電に利用されていない放流水などを活用した発電施設を増設した上で一体的に運用する。
商用発電、管理用発電のPFIのいずれの場合でも地域貢献の提案を求める。ダム周辺地域を含む日光市などの地域振興策などを踏まえ、さらに促進させる可能性を持った提案を求める。
ハイブリッドダムの手法では、洪水後期放流の工夫や非洪水期の弾力的運用により水力発電を実施。洪水後に貯水池の水位を下げる放流は、当面降雨が予想されない場合、緩やかに放流して水力発電を実施。非洪水期にまとまった降雨が予想されるまでの間、一定の高さまで貯水位を上げ、安定的に放流して水力発電を実施する。
湯西川ダムは右岸側に管理用の小規模発電設備を設置。最大350㎞㍗の能力。現在は管理棟で使用する電力やロードヒーティングなどとして活用している。
建設前には県企業局の発電所があり、最大3400㎞㍗を発電した。ダム建設に併せ建屋や発電設備、水圧鉄管等主要施設を撤去。ダム貯水池上流部には取水口や導水路が残っている。
湯西川ダムは12年に完成した重力式コンクリートダム。堤高119m、堤長320m、堤体積106万立方m。有効貯水量が7200万立方m。コスト縮減や周辺環境への配慮から原石山を設けず、本体施工には掘削土や川治ダムの堆積土などを流用。巡航RCD工法によりダム本体の打設工期を短縮し19カ月で完了した。