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茨城県土木部

プロジェクト 国と連携/県土木部 田村央部長インタビュー

2024/05/18 日本工業経済新聞(茨城版)

 2024年度を迎え、県土木部の田村央部長が本紙の新年度インタビューに応じた。新年度の抱負をはじめ、24年度の事業概要、時間外労働の罰則付き上限規制(2024年問題)、担い手確保への対応などの土木部の取り組みを紹介していく。


-新年度の抱負や目玉事業について


 県総合計画の基本理念である「活力があり、県民が日本一幸せな県」の実現に向けて、「災害・危機に強い県」と「活力を生むインフラと住み続けたくなるまち」づくりにスピード感を持って取り組む。


【災害・危機に強い県づくりについて】

 昨年6月や9月の豪雨災害を踏まえて、牛久沼の越水防止対策や、特に被害の大きかった県北の9河川において緊急的な対策を進めていくほか、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に集中的に取り組み、流域全体であらゆる関係者が協働して治水対策に取り組む流域治水や公共施設の耐震化、緊急輸送道路の整備などを推進していく。


【活力を生むインフラと住み続けたくなるまちづくりについて】

 首都圏中央連絡自動車道の4車線化や東関東自動車道水戸線の整備促進、スマートインターチェンジの整備促進、茨城港および鹿島港の港湾機能強化、カーボンニュートラルへの対応などに取り組み、陸・海・空の広域交通ネットワークの充実を図る。

 特に圏央道4車線化および東関道水戸線の整備については、いずれも26年度までに全線開通する見込みが国土交通省から示される中、今年度はつくば中央IC~牛久阿見IC等の3区間が開通予定となっている。事業の最盛期を迎えることから、国等に整備促進を働きかけるとともに、県としても最大限協力していきたい。

 また、茨城港常陸那珂港区については、地域の基幹産業の競争力強化のため、中央ふ頭地区における水深14m岸壁が今年度事業化された。国土交通省と連携し、早期完成に向けて整備を進めたい。


【そのほか】

 通学路等の生活道路の整備や観光地における渋滞対策など、日常生活に密着する事業についても重点的に取り組むなど、本県の発展を支えるインフラ整備を積極的に進める。


-建設業の担い手の確保・育成や2024年問題について


 建設業における時間外労働の罰則付き上限規制への対応は、喫緊の課題であると考えている。県としては、発注者として就労環境の改善や生産性向上といった観点で県発注工事を通した取り組みを進めてきた。また、事業者への働きかけとしても、さまざまな取り組みを行ってきたところであり、今後もしっかりと取り組んでいきたいと考えている。


【発注者としての取り組み】

 建設業の働き方改革の実現のためには適正な予定価格と工期の設定が非常に重要な課題。適正な予定価格の設定については、24年度の公共工事労務単価を労働市場における賃金の上昇を反映し、前年度から6%を引き上げたところ。資材単価についても、市場取引価格の変動を随時、速やかに反映させる。

 適正な工期設定については、建設現場で働く方々が計画的に休暇を確保できるよう週休2日制促進工事の推進を図っており、24年度からは原則すべての工事で週休2日での施工を義務付けた。引き続き、現場条件に柔軟に対応できるよう月単位の4週8休制も選択できる。また、余裕期間制度やゼロ県債の活用による施工時期の平準化を推進し、長時間労働の是正に努めている。

 こうした取り組みを着実に実施し、生産性の向上に向けたICT活用促進工事や遠隔臨場、情報共有システムの活用を積極的に進めるほか、電子契約、電子納品などのインフラ分野のDXに関する取組についても推進していきたい。


【事業者への働きかけ】

 業行政としての取組については、まず、建設業許可や経営事項審査に電子申請による手続を導入し、効率化を促している。

 また、県社会保険労務士会や労働局など関係機関と連携し、働き方改革等についてのセミナーや説明会の開催のほか、地域経済団体への周知依頼などの働きかけを行ってきた。

 さらに、民間工事受発注団体との連携にも努め、民間工事における適正工期の確保等のための連絡会議の開催などを行ってきたところ。

 今後は、特に民間工事発注者団体への働きかけのほか、市町村への働きかけも強化し、2024年問題に対応していきたい。

 最後に、今年度も公共工事の円滑な施工を確保するとともに「地域の守り手」である地元の建設業の持続可能な発展を支えていくため、以上のような取り組みを積極的に進め、時間外労働の規制に伴う新たな課題が表面化してきた場合には速やかに対応したい。


-建設業者へのメッセージについて

 建設業者の皆さまには、日頃より「地域の守り手」として、災害時の対応をはじめ、地域インフラの整備や維持管理に尽力してもらっている。昨年度の高病原性鳥インフルエンザ発生の際には、建設業界の多くの方々に防疫作業に協力してもらい、お礼を申し上げたい。

 県土づくりを進めていくうえで、インフラの適正な維持管理や、頻発化・激甚化する災害への対応など多岐にわたる課題や要請に応えるためには、地域に精通した地元建設業者や測量設計コンサルタントをはじめとした建設業界の皆さまの技術力が必要不可欠であり、これまで以上にその役割が期待される。

 このため、地元建設業界における担い手の確保・育成が大変重要となることから、適正な予定価格の設定や週休二日制の導入促進や施工時期の平準化、ICT施工の普及・拡大、書類の簡素化・統一化など就労環境の改善や生産性向上に資する取り組みとともに、関係機関と連携し民間発注者団体や市町村等への働きかけ等を推進することで、建設業界における働き方改革の支援にも積極的に取り組んでいく。

 今後とも、時代の変化に対応しつつ効果的かつ効率的な社会資本整備を通じ、県政の発展に全力で取り組んでいきたいと考えているので、より一層の理解と協力をお願いしたい。

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