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電線・ケーブルの不足問題 今後、海外輸入ルートどう確保

2024/06/07 群馬建設新聞

2023年夏ごろから始まった、群馬県内外での電線・ケーブルの不足問題。近況を探ると「失われた30年」と表される日本の事なかれ主義による弊害や、ガラパゴス化した産業構造による国際競争力の低下、さらには2025年問題など、変革の時代を象徴する事象の一端を担っていることが垣間見えた。

事の発端となる23年夏。新型コロナウイルス感染症対策の緩和に加え半導体工場の新設や大阪・関西万博といった大型案件の発注、さらには年度末工期の工事が重なり、メーカーでの生産量が追い付かなくなった。

商社の営業担当者によると、24年4月からは各ケーブルの在庫は確保できる状況となり、納期も回復し「何とかなった」形。しかし、不足の原因については首をかしげる。

原因の一つと伝えられた大型案件の増加について調査したところ、それほど案件が集中しているとは考えにくいことが分かる(下図参照)。電線輸入業者によると、00年代初めごろから低・高圧を得意とするメーカー大手は、人口減少等の市場予測からスリム化を進めており、そもそも生産体制は縮小傾向にあったという。20年の東京オリンピックなども経験しており、急激な案件増が不足との理由とはならないのではないだろうか。

ここで、もう一つの原因と考えられる銅ベースの価格上昇と円相場だが、関連性がうかがえる資料に当たったものの、さらなる調査のもとで明らかにしたい。

一方、日本よりも市場規模が小さい韓国では、20年前にはすで世界標準のIEC規格を取り入れ国際競争力を高めてきた。遅れを取る中、国内メーカーは国の後押しも受けて、超高圧ケーブルや海底ケーブルの生産に注力しており、低・高圧ケーブルの増産には消極的。また、商社では国内にないものを海外から輸入するためのルートはなく、今後も取り扱いはしないとみられる。さらに、アルミケーブルへの置き換えはメリットがある一方、トータルでアルミに転換しなければならず、施工性等も考慮すると現実的ではない。

2050年の日本の総人口は9515万人と推計され、05年のピークから3300万人と減少の一途をたどる中、賃上げ、値上げと中小企業の経営者に突きつけられた課題は大きい。しかし、電線・ケーブル不足問題に対応するには、海外輸入ケーブルの入手ルートの確保や輸入製品への抵抗感の解消はもとより、最大の経営資源「ひと」を確保し「モノ・カネ・情報」を駆使することで、柔軟に対応することが重要だ。

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