県上下水道課は、下水道資源化工場の下水汚泥を利用し肥料製造やリン回収の可能性の検討に着手する。上半期までに調査検討業務をコンサルタントに委託。業務は国交省が3月に公表した下水汚泥資源の肥料利用に関する検討手順書を踏まえ実現可能性を探る。手順書では①流通経路の拡大②肥料化手法の選定③「菌体リン酸肥料」製造のメリットと必要要件、肥料登録④品質管理計画や検査計画の作成方法―の4ポイントを挙げている。
手順書では肥料利用に関する具体的な検討手順と留意事項を解説。肥料利用の実施判断では経済性の検討に加え、地域農業への貢献、サーキュラーエコノミーの構築、温室効果ガスの削減効果、リン回収による水質改善効果などを考慮して総合的に肥料化の実現可能性を検討。
現時点で事業化が困難な場合でも普及啓発活動、新技術の情報収集を進め、適切なタイミングであらためて肥料化について検討する。
流通経路の拡大に向けたポイントでは肥料製造事業者や利用者との連携体制を構築。拡大に向け継続的な取り組み事例を紹介。
肥料化手法の選定では、汚泥の分析結果や処理施設の状況を踏まえ、検討すべき肥料化の手法と内容を解説。肥料の早期利用開始に向け外部委託を優先的に検討する。肥料化の手法では、コンポスト、乾燥、炭化、リン回収を挙げ特徴を紹介。
菌体リン酸肥料は肥料設計の容易さなど製造メリットや品質管理計画の作成義務化など要件と手続きを解説。メリットとして保証成分量を下回った場合でも汚泥肥料として出荷が可能とした。
肥料の品質管理では定期的な分析の実施と結果をホームページなどで公表。国交省は4月、汚泥脱水等77、焼却灰36の計108処理場(重複5処理場を除く)の成分分析結果を公表。2030年度までに下水汚泥資源の肥料化の使用量を倍増する目標を示した。
化学肥料の原料となる尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムは輸入に依存。輸入国の偏在性や政情不安を背景に価格上昇が続いている。
国は15年に下水道法を改正。バイオマスとして高いポテンシャルを保有する下水汚泥について、全国の下水道管理者に燃料や肥料(コンポスト化)の再生利用を努力義務化した。
肥料成分のリンは農作物の育成に不可欠。化学肥料のリンは全量が輸入。23年3月、国交省は肥料の国内生産を目的に下水汚泥の肥料化の検討を全国の下水道管理者に通知。下水汚泥はリンや窒素などの資源を含有。年間汚泥発生量のうち約5万㌧のリン含有が試算されている。
県は下水汚泥を有効活用する目的で、02年下水道資源化工場を供用。資源化工場は流域6処理場、公共30処理場の汚泥と汚泥焼却灰を集約処理している。県内全体の汚泥発生量は年間約7万㌧。このうち約4万㌧を資源化工場で処理している。
県と資源化工場に納入する17市町は国の通知を受け勉強会を開催。下水汚泥の肥料化やリン回収が可能か、コンサルを交え今年度に調査する。
下水汚泥はリンや窒素のほか、ヒ素や水銀など有害な重金属を含んでおり、成分次第では肥料に不向きとされるケースも多い。
21年度県内45カ所の処理場から発生した汚泥量は7万1514㌧。うち82・2%の5万8796㌧が有効利用されている。内訳はスラグ1万91㌧(14・1%)、セメント原料等3万9933㌧(55・8%)、コンポストによる肥料が8277㌧(12・3%)。