建設キャリアアップシステム(CCUS)が2018年5月の事業者登録、19年4月から本運用を開始し5年が経過した。更新手続きも始まるなど、制度として運用が進んでいる。一方で、建設キャリアアップシステム運営協議会は、重点項目に地方、2次下請け以下、設備・住宅関係などの技能者・事業者登録の促進、就業履歴の蓄積促進等の現場利用推進を掲げている。現場利用の最たるものとして、公共事業ではモデル工事の実施などが想起される。日本工業経済新聞社は、本社と支局ネットワークを生かし関東甲信越の状況を「ニュースの交差点―広がるCCUS活用―」と題し、全7回で紹介する。第1回は群馬編。県内の自治体を調査する中で、市での導入に向けて課題が山積している状況が見えてきた。
県県土整備部では、原則全ての工事を「発注者指定型」および「受注者希望型」のいずれかの方法によりCCUS活用工事として入札を公告している。そのうえで、工事成績評定は、管理者IDの登録、事業所および技能者による当該現場の登録、カードリーダーを設置して就業者履歴を蓄積すればの加点。国の基準に準じカードリーダー設置費用および現場利用料の積算計上を行っている。
県では23年度、2231件の工事を公告した。総合評価落札方式における加点や、入札参加資格審査での加点など、CCUSに取り組んでいる企業へのインセンティブを付与している。
24年度は「発注者指定型」の適用設計額を5000万円以上から2000万円以上に引き下げており、さらなるCCUSの活用促進に努めている。
一方、12市については導入実績がない。「制度の適用を目指して検討を進めている」と回答した市もあったが、導入を検討していない、導入する予定もないとした自治体が多数派だった。
導入が進んでいない要因として、カードリーダーといった機器の導入に費用などコストがかかることのほか、担当課職員が少ないなどの理由で体制が整えられないことなど、発注者側の人手不足によりCCUSの運用に伴う制度設計の策定まで労力的に行えていないことが各市で共通している。
市によっては建設工事に対する専門の担当者が置かれていない場合や、建設関係課以外から配属となる職員もいることから、CCUS自体を認知していないケースも見られた。加えて、担当となり制度を把握した場合でも、数年で異動となるため、その都度、制度導入に向けて検討の見直しに入ってしまい、導入に向けた課題整理などの取り組みが進まないのが現状。
市へのCCUS導入はハードルの高さを感じざるを得ないが、国土交通省が「あらゆる工事でCCUSを完全実施」と掲げている中、なにかしらの手を打たなければならない。例えば、群馬県建設業協会沼田支部のように、会員企業全社にCCUS登録を働きかけるなど、地域での動きも必要といえるのではないだろうか。