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小山市押切地区防災集団移転、26年度の住宅団地着工へ、来年度、国に事業計画提出、総事業費20億円

2024/07/09 栃木建設新聞

 小山市は、杣井木川流域排水強化対策の押切地区防災集団移転促進事業計画修正に着手した。移転先は押切地区から東方10㎞圏の県道大戦防小山線に隣接する県営塚崎団地跡地の約1haを選定。移転対象戸数約30戸の地権者の同意をほぼ取り付けた。半数は市が造成する住宅団地、残り半数は別の場所への移転を希望している。2024年度は現居住地の物件調査、移転先の詳細設計を委託した。25年4月をめどに国へ事業計画書を提出し、詳細協議へ移行する。26年度の住宅団地造成着工を目指し、総事業費約20億円を見込んでいる。

 移転先の県営塚崎団地跡地は市有地だけに、用地取得の手間がなく更地化済み。1級河川思川東側に位置し、過去の内水被害ゼロが決め手になった。逆コの字型の土地形状を成し、付近は住宅街が広がり商業施設が多数立地。生活利便性が高く、落ち着いた住環境。

 22~23年度の事業計画策定は日本工営都市空間が担当。24年度の事業計画修正は5月、URリンケージに委託した。24年度の物件調査内容を事業計画に落とし込み、国と住宅団地造成に向けた具体的なスケジュールの協議資料に役立てる。

 住宅団地の戸当たり面積は330平方mに設定した。個々の敷地面積は一律である必要はなく、移住者の希望で330平方m以上でも以下でも差し支えない。平均面積が330平方m以内に納まれば問題はなく、移住者が求める敷地面積の自由度は比較的高い。

 移転先の住宅団地整備は市が事業主体となることが必須。団地内に必要な街路、上下水道施設といった公共インフラは市が整備する。団地内の戸建て住宅は移転者が建設する。団地内への移転に限り土地取得と住宅建設費は補助の対象。元地は市が買収する。

 集団移転は検討項目が多く、細部を詰めるのに長期間を要す。このため事業期間の制限は定められておらず、移転者には土地建物購入の経済的負担が生じる。移転完了後は浸水被害に見舞われることがなくなる半面、生活形式は大きく変化する。

 市が整備する住宅団地の規模は5戸以上で移転対象戸数の半数以上が住宅団地への入居が要件となる。一定のコミュニティ確保には、まとまった戸数の住宅立地が必要なため。国の補助率は事業計画策定が2分の1、それ以外は4分の3が認められる。

 押切地区は20年度、集団移転を選択。21年度は地元との勉強会を3回重ね、22年度は事業説明会を開催した。22年度の物件調査概算補償算定と用地調査、23年度の用地測量は個別に東武測量設計に委託。委託面積は杣井木川と永野川に挟まれた2・8ha。

 引き続き23年度は移転先予備設計、24年度は移転先詳細設計を個別に中央測量設計に委託済み。押切地区の物件調査は東武測量設計が担当する。元地は建築基準法に基づき、災害危険区域に指定する。24年度末の指定が目標。新たな住宅建設は禁止となる。

 杣井木川は栃木市境町の源流から小山市押切で永野川左岸に合流する流路延長9・2㎞、流域面積12平方㎞の河川。流域は巴波川と永野川の堤防に囲まれており、永野川合流点に県が杣井木川排水機場を増設。永野川の水位上昇に応じ、ポンプ排水している。

 15年の関東・東北豪雨の際、流域では浸水面積100ha、床上浸水69戸、床下浸水9戸の甚大な被害が発生。県内の24時間雨量は最大356㎜を想定。400年確率規模での降水量に耐えられるよう災害リスク地域から安全なエリアの移転策を練り上げる。

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