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低入調査の改善検討/年度内に方向性

2024/09/18 長野建設新聞

 県は建設工事および建設コンサルタント等業務の低入札価格調査制度について改善を検討する。調査基準価格の上限値(工事は予定価格の94.5%、業務は同90%)付近に入札価格が集中し、そこからわずかに下回った価格で調査対象となる事例が発生していることや、工事では調査により失格となった事例がなく、制度の形骸化が指摘されていることを踏まえた対応。建設部技術管理室は「本年度中に改善の方向性を示す」と表明した。

 この意向は13日の県契約審議会で示された。現行の調査基準価格等の算定基準は、国の主な発注機関でつくる中央公共工事契約制度運用連絡協議会が2022年4月に改正した中央公契連モデルを上回る水準で、市場の実勢価格の反映や同額によるくじ引き決定を抑制するため、応札者数や応札額による「変動制」を採用している。現時点で平均落札率は工事、業務とも全国平均を上回っており、過度な安値受注も確認されていない。

 一方で「応札者自らの積算を促す発注方式」の廃止や受注者の積算精度の向上により、入札が調査基準価格の上限値付近に集中し、そこからわずかに下回った価格でも調査対象となる事例が発生。また、調査では短期間に膨大な書類を提出する必要があるが、工事においては調査により失格となった事例はなく、結果的に「受発注者双方の事務負担が増大しているだけ」との指摘もある。

 工事の場合、過去5年間、低入札価格調査の該当件数は開札件数の5%前後で推移。対象者が辞退したことなどにより該当から外れた案件を除き、実際に調査を行った割合は該当件数の7~8割という状況【表参照】。

 県が示した事例では、入札が予定価格の94.5%付近に集中した結果、応札8社のうち7社が調査基準価格を下回ったケースや、予定価格2億円超の案件で、落札率94.49%、調査基準価格を1万円下回り調査対象となったケースがあった。

 一方、委託業務の低入札価格調査の状況は、該当件数こそ過去5年間、開札件数の約2~4%で推移しているが、調査対象となった場合、ほとんどが辞退しており、23年度は調査実施件数が1件のみだった【表参照】。技術管理室は「業務では第三者による照査が必要であり、これが効いているのではないか」と説明した。

 同室は「これらの課題や担い手3法の改正を踏まえ、これまでの入札状況の分析や他県の動向等を調査するとともに、関係者との意見交換を行い、制度の改善を検討する。本年度最後の契約審議会には改善の方向を示したい」と話した。

 審議会の木下修委員(県建設業協会会長)は、期限を決めて新たな案を示すとした県の姿勢を評価。一方で、県が率先して働き方改革や担い手3法に対応している一方、市町村の動きが鈍いことを問題視し、「若者に目を向けてもらえるよう業界として環境改善に取り組んでいるが、県の工事は週休2日でも、かたや同じ市町村の工事は土曜も行われているとなれば、努力が水の泡になってしまう。物価スライドや設計変更の対応も然り。実態を調べ指導してほしい」と意見を述べた。

 県は「品確法の改正により、入札契約の適正化に向け、国が自治体に対し『勧告』できるようになった。こうした事態になる前に市町村が対応できるよう助言・指導していく」と応じた。

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