県上下水道課は、下水道資源化工場などの汚泥を利用し肥料製造やリン回収を行う肥料化センター整備の検討に着手。農政サイドの需要先調査を踏まえ、肥料の状態や生産量などヤードを含めたセンターの規模を精査する。2025年度には施設整備計画や候補地の選定に着手したい考え。可能性を探る下水汚泥肥料化検討業務はオリジナル設計に委託。今年度末をめどに成果をまとめる。
国交省は23年3月、発生汚泥等の処理に関する基本的考え方を示し、脱水・焼却を行い減容化に努めるとともに燃料・肥料として再生利用化を全国自治体に通知した。
背景には化学肥料の原料となる尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムは輸入に依存。輸入国の偏在性やウクライナ戦争などによる政情不安も手伝い価格上昇が続いている。
国交省は24年3月、下水汚泥資源の肥料利用に関する検討手順書を公表。手順書では①流通経路の拡大②肥料化手法の選定③「菌体リン酸肥料」製造のメリットと必要要件、肥料登録④品質管理計画や検査計画の作成方法―の4ポイントを示した。
手順書では肥料利用に関する具体的な検討手順と留意事項を解説。肥料利用の実施判断では経済性の検討に加え、地域農業への貢献、サーキュラーエコノミーの構築、温室効果ガスの削減効果、リン回収による水質改善効果などを考慮して総合的に肥料化の実現可能性を検討する。
流通経路の拡大に向けたポイントでは、肥料製造事業者や利用者との連携体制を構築。拡大に向け継続的な取り組み事例を紹介。
肥料化手法の選定では、汚泥の分析結果や処理施設の状況を踏まえ、検討すべき肥料化の手法と内容を解説。肥料化の手法には、コンポスト、乾燥、炭化、リン回収を挙げ特徴を紹介。
農政サイドの需要先調査は①灰からリン回収②灰の状態で肥料化③コンポスト化による有機肥料④①~③を組み合わせた生産―など要望に沿った検討を進めている。
国交省が15年に改正した下水道法では、バイオマスとして高いポテンシャルを保有する下水汚泥について、全国の下水道管理者に燃料や肥料(コンポスト化)の再生利用を努力義務化した。
県は下水汚泥を有効活用する目的で、02年下水道資源化工場を供用。資源化工場は流域6処理場、公共30処理場の汚泥と汚泥焼却灰を集約処理している。県内全体の汚泥発生量は年間約7万㌧。このうち約4万㌧を資源化工場で処理。
県と資源化工場に納入する17市町は国の通知を受け勉強会を開催。下水汚泥の肥料化やリン回収が可能か、コンサルを交え今年度に調査し判断する。