インドネシアの工事現場では、ビーチサンダル、ジーパン姿で、ヘルメットも安全帯もなく仕事をしている姿が見られる。足場は竹や木などだ。建設業で働きたいという若者たちに対して、親は建設業は危険だという意識が強い。建設技能人材機構(JAC、三野輪賢二理事長)が8月24日にジャカルタで開催した「Japan Construction Industry HANDS-ON WORKSHOP」。JACでは昨年、OS SELNAJAYA(セルナジャヤ)とともに各地の学校訪問を行い、特に先生方から両親がそういう心配しているという声を聞いていた。ゆえにワークショップの一番のポイントは安全対策と優れた技術。特に足場を実際に組み立てて、日本の建設業が安全を最優先にしていること、そして高い技術があることを認知してもらうことに照準をあて、広く発信することができたものとなった。
【日本のメリット】
日本がなぜ選ばれるのか。ワークショップのオープニングでJACの山本専務理事は日本で働くメリットとして「賃金」「安全対策」「中長期的なキャリアパス」を挙げた。賃金に関してはジャカルタの最低賃金が約5万5000円、地方に行くと2万円と言われる。特定技能で日本にくれば技能レベルが同等の日本人と同等給料となるため、魅力的だ。また、日本の現場では、当たり前のことのように感じる安全対策も、国際的にはトップクラスと言える。
【日本の希少性】
杉田昌平弁護士は、今回のJACの取り組みは、雇用する業界団体が直接情報提供、働きたい人は相談コーナーで情報が得られる点を高く評価している。これは、日本へのルートの透明度が高く、悪徳ブローカーによる「行ける行ける詐欺」を防ぐ手立てとしても有効だという。日本では当たり前だと思っている労働安全衛生が、他の国と比べると希少性の高いもの。それを世界水準で初めて労働市場に示せていることが大きい。
【新卒採用する日本】
日本人にとって、就職する時は新卒で採用というのは、至極当然のことで、それに疑問を持つことは少ない。この門戸は、海外からの人材に対しても開いている。しかし、諸外国では事情が異なる。
日本は新卒者を採用するすごく稀な労働市場で、それがそのまま国際労働市場につながり、新卒者にビザを出すという世界的には変わった形になっている。
例えば、オーストラリアは業務経験が2年以上なければ働きに行けない。だが、日本には経験がなくても行ける。日本で必要な期間働き、キャリアアップする。または帰国して、業務経験が必要な国に行くこともできる。
【First Career in Japan】
世界で働くためには、まず、日本で最初のキャリアを積む。そうなっていけば、日本は世界のトレーニングセンター的な位置付けになる可能性が出てくる。常に若い人材が各国から集まり、日本式の安全と技術を学んで、世界に広がっていく。それに供給は途絶えない。新卒を受け入れる国がないのだから。ゆえに、「First career in Japan」となってくる。
【高まるJACの役割】
今回、インドネシアはジャカルタで建設業務体験会を開催したことは、同国の労働における「日本の建設業」の地位を確立するエポックメイキングとなったのではないか。さらに、JACは同国内の工業高校などに巡回訪問して、日本の建設業をアピール。さらに、会員団体が行う職種説明会、技能講習などへの支援は重要さを増すのは確実で、同国内での好事例の横展開、さらに他国での横展開へと、JACのフィールドは世界に広がっている。
おわり