作業の効率化や省人化など、ICT技術が職場環境にもたらす影響は大きく、少子高齢化が進むにつれて重要度はさらに増していくだろう。建設業界においても公共工事などで技術導入が進む中、企業側は挑戦しやすい体制を求めている。日本工業経済新聞社は、本社と支局ネットワークを生かし、関東甲信越の状況をニュースの交差点「検証・ICTで効率化」と題し、全7回で紹介する。第1回は群馬県。施工期間の短縮や燃料管理の面でのコスト削減など、多様な利点が確認されている一方、山間部などの急峻な施工場所には適さないなどの課題も上がっている。
群馬県では、ほ場整備など比較的広大な現場でのICT施工が進んでいる。県中部農業事務所渋川農村整備センターでは、2019年度の県営赤城西麓土地改良事業で行った中原地区のほ場整備から実施している。
当時、工期の短縮を図るために導入し、施工期間は3分の1ほど短縮でき生産性の向上につながっている。また、燃料管理の面でもコスト減となっているほか、当時から経験豊富な重機オペレータの確保が難しくなってきていたところ、ICT施工を導入することで人員の技術の熟練度を選ばず作業ができ、人材面の窮地も救ってきたともいえそうだ。
同センターの担当者は「現場での丁張がほぼ必要なくなったり、作業土工の床付け作業が短縮されたりと細かい点でも効率化が図れる。施工計画と使用機材リスト、3次元設計データを見れば発注者側も契約通りの施工が実施されるかどうか判断できるので信頼もしやすい。また、現場での確認作業も手間が省ける部分が多い」と話す。
有人での施工が危険となる現場での導入も進んでいる。国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所では、浅間山噴火時に火砕流や土石流の発生が予想されることから、作業員が遠隔操作を行う無人化施工を07年から進めてきた。さらに、県内では初となる自動施工の現地見学会を開催し、ボタン一つで自動運転のキャリアダンプが有人操作のバックホウで積み込まれたソイルセメントの運搬を行い、指定位置に放土の後、積み込み位置まで戻っていく様子が実演された。
同事務所では今後、無人化施工と自動施工のどちらが有効か、緊急性や予算などの面から検証を進めるとしている。
建機の実演を行った大林組西日本ロボティクスセンター技術開発課の担当者は「建機の位置確認はGNSSとSLAM技術の2つを有するなど、緊急時対応や施工場所を選ばない技術開発を進めてきた。今後はさらに汎用的な性能を持たせる必要があると感じている」と語った。
現状の課題として、山間部などの急峻な施工場所には適さないこと。また、なによりもICT専用機器および重機などは高額になることから導入コストや、維持管理にもコストがかかることが挙げられる。さらに、熟達した作業員によるオペレーションを必要とする現場が存在することも問題の一つといえるだろう。
これらの課題を解決するためには、ICT施工の技術開発が進むことはもとより、企業としてICT施工の導入や施工管理を進めることを促進し、並行して引き続き人材確保にも力を入れることが方策といえるのではないだろうか。