環境省の浄化槽法施行状況点検検討会は「特定既存単独処理浄化槽に対する措置」「維持管理向上のための浄化槽台帳の整備や維持管理情報の電子化」に関する基本的方向性と具体的措置をまとめた。環境省は今後、指針や省令の改正に加え、補助金予算を継続的に確保。県と市町は予算制度の活用と併せ、指定検査機関や業界団体と連携し11条検査の徹底と不適格な単独処理浄化槽の除去を含め合併処理浄化槽への転換、電子データによる浄化槽台帳の整備と保管に務める。(10面に浄化槽の日特集)
2020年4月、改正浄化槽法が施行。判定による除去や転換など特定既存単独処理浄化槽に対する措置、浄化槽台帳等の制度を新たに定めた。環境省は施行に先立ち20年3月に単独槽措置に対する指針、21年4月には台帳システム導入マニュアルを公表している。
漏水などを放置しておくと周辺環境に悪影響を及ぼす特定既存単独処理浄化槽を特定し除去などの指導ができる判定制度は、都道府県や中核市に権限を委任。現時点で制度が機能しているのは全国で鹿児島県にとどまっている。
浄化槽台帳は指定検査機関に集められる7条と11条検査結果とともに、保守管理、清掃、維持管理の情報を一元管理。浄化槽の整備促進と維持管理に活用できるメリットが多いものの、台帳を電子システムとして整備している地方自治体の割合は依然として低い。
総務省は環境省の指針等が十分に活用されていないばかりか、特定既存単独槽の判定が進んでいない現状を指摘。24年2月には環境省に対し勧告を行った。
是正措置は①特定既存単独槽の判定の考え方の見直しと定量的基準の設定②清掃業者や保守点検業者からの情報収集の仕組みを有効に機能させるための措置③浄化槽台帳の整備と活用方法の提示、デジタル化の検討―を求めた。
検討会は総務省勧告を受け設置。国や都道府県、市町村などの役割と方向性を明確化した。
汚水処理を所管する環境省、国交省、農水省の3省は、汚水処理施設の未普及解消に向け14年1月「持続的な汚水処理システム構築に向けた都道府県構想策定マニュアル」を作成。今後10年程度をめどに汚水処理施設の早期整備と、運営管理の観点を含めた長期の持続的システムの構築を目指すとしていた。
8年が経過した22年度末現在、全国約880万人が汚水処理未普及であり、多くは都市郊外や地方部に偏っている。
検討会は都市郊外や地方部で効率的・経済的に汚水処理サービスを提供できる浄化槽への期待が高まっている半面、未普及人口の半数以上が単独槽利用者とし、合併槽への転換の一層の加速化が大きな課題と指摘した。