南アルプス市の御勅使(みだい)川取水施設改修工事(同市駒場地内)で、仮設構台などに日綜産業(本社・千葉県千葉市)の「マルチアングル工法」が採用された。支保工で使用される部材を活用したシステム構台で、人力で設置が可能。設置に特別な技術はいらず、従来工法に比べ短期間で組むことができるのが特徴だ。
同工事は調整池のよう壁の再整備や新設、電気・機械設備類の整備などを行うもの。施工は長田組土木が請け負った。現場への進入路は狭いものの、普通車であれば通行は可能。当初設計では重機や大型車についても既存の道路を通行することになっていた。しかし実際の現場をみると重機が通行するには道幅が狭く、また転落の危険が伴う。このため市と設計者、施工者で協議し、仮設の通路を整備し、別の場所に構台を設置するよう設計を変更。仮設構造物にマルチアングル工法の採用を決めた。
監理技術者を務める長田組土木の小林正人さんは同工法を採用した理由を「従来のH鋼では設置に時間が掛かる。マルチアングル工法であれば短期間でできるため工期短縮につながるし、コストもその他の工法より安い」と話した。
同現場では、構台など仮設構造物をこれまでに82t分(高さ7・8m)設置したが、設置に掛かった期間は2週間程度。最大25tのラフタークレーンを支える強度がある。今後は工事の進捗に合わせ150tまで増設する計画。作業員と部材が入る場所があれば設置でき、組み立てに特殊な工具は必要ない。高さ調整はジャッキだけでできる簡単さ。設置に当たり振動や騒音などは発生せず使用後の廃棄物も出ないため、環境にもやさしいという。
小林さんは「現地に合わせて融通が利くのが良い。この現場に適した工法だ」と満足げに語った。
【写真左=仮設構台に採用】
【写真=支保工の部材を活用】