国土交通省は令和6年能登半島地震を踏まえ、全国の上下水道施設を対象に耐震化の緊急点検を実施した。取水施設や下水処理場など機能が失われると広範囲かつ長期的に影響が及ぶ基幹施設(急所施設)は、全体的に耐震化率が低い。また、避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の管路やポンプ場などが両方とも耐震化されているのは約15%(茨城県は1%)で、早急な対応が求められる。国交省では、全水道事業者や下水道管理者等に緊急点検結果を踏まえた「上下水道耐震化計画」を年明け1月末までに策定するよう要請しており、集中的に耐震化を進める。対応には財政支援が必要で、斉藤鉄夫大臣は、補正予算をにらんだ総合経済対策にも盛り込んでいきたいとしている。
急所施設の耐震化率は、上水道の取水施設で約46%(茨城県17%)、導水管約34%(茨城県30%)、浄水施設約43%(茨城県30%)、送水管約47%(茨城県54%)、配水池約67%(茨城県54%)。
下水道は処理場が約48%(茨城県46%)、処理場直前の合流地点から処理場までの管路約72%(茨城県13%)、その間にあるポンプ場は約46%(茨城県48%)となっている。処理場は箇所ベースで算出し、1系列でも耐震化されていなければカウントしていない。
重要施設に接続する管路は、①配水池からの水道管路②下水処理場直前の合流地点までの下水道管路およびポンプ場―が対象。双方が耐震化されている重要施設は、全国約2万5000カ所(茨城県690カ所)のうち3649カ所(茨城県6カ所)、約15%(茨城県1%)にとどまった。
今後は、全水道事業者や下水道管理者等に対年明け1月末までに策定を要請した上下水道耐震化計画に基づき、計画的、集中的に耐震化を進める。取り組み状況は定期的にフォローアップして結果を公表し、必要な支援を行う。
このほか、耐震化に合わせた料金や使用量の適正化等による経営改善、運営基盤強化、施設のダウンサイジングや統廃合、分散型システムの活用等による施設規模の適正化を推進する。効率的な耐震化技術の開発、災害時の代替性・多重性の確保も位置付けている。
今後、耐震化への取り組み要請がさらに強くなり、財源が必要になる。これまでも交付金で支援しており、2025年度予算概算要求では、急所施設や重要施設に関する計画的な耐震化支援として個別補助の創設・交付金の拡充を盛り込んだ。災害時の代替性や多重性の確保へ交付金の拡充も盛り込んだ。
総合経済対策に対しては、8月の水循環政策本部会合で当時の岸田総理から「秋の経済対策も見据えて上下水道の耐震化を早急に進めてください」との発言があり、斉藤国交大臣は経済対策に盛り込めるようにしていきたいと話している。
【急所施設】
※機能を失えば上下水道システム全体が機能を失う最重要施設
◆水道=取水施設、導水管、浄水施設、送水管、配水池
◆下水道=下水処理場、下水処理場~下水処理場直前の合流地点までの下水道管路およびポンプ場(流域下水道の下水道管路およびポンプ場は全て急所施設)
【避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の管路等】
※重要施設は、地域防災計画等で定められている避難所や医療機関など
◆水道=避難所などの重要施設に接続する配水本管および配水支管
◆下水道=避難所などの重要施設~下水処理場直前の合流地点までの下水道管路、その途中にあるポンプ場