過労死防止対策をテーマにした山梨労働局主催のシンポジウムが26日、甲府市のベルクラシック甲府で開かれ、植野興業(甲州市)専務取締役の植野正保氏が時間外労働削減への取り組みを発表した。
同社では人員や労働時間を削減するため測量業務にドローンを導入。1年間の実績を検証した結果、人員は5割、労働時間は6割の削減につながった。また発注者との書類のやり取りにWEBを使った情報共有システムを構築した。「私の感覚では建設業の仕事は現場が4割、書類が6割」という中、事務作業の効率化は課題だった。システムの導入により発注者との調整や移動時間などを4割削減することができた。
さらに現場が広域にわたる中、勤怠管理がスマホ・パソコンでできるシステムも導入した。従業員の労働時間や休暇などの勤務状況を見える化することで、法令に遵守した労働環境の整備に努めている。
植野氏は会社の空気づくりにも特に注意を向ける。「上司が若手社員の話をいつでも聞くという体制を心掛けることが、会社全体の雰囲気を良くする」といい、若手の意見に耳を傾け、安心できる企業を目指す。
また内勤の従業員も含め毎朝ラジオ体操を行い、健康意識を高めている。今年1月には県から「やまなし健康経営優良企業」に認定された。建設業は就職後3年以内に3割が辞めるとされる中、同社は2019~23年の5年間に辞めた人はいないという。
植野氏は時間外労働の削減や働きやすい職場づくりには「社内の風通しの良さや社員の健康など、あたりまえのことに目を向けるべき」と話した。