建て替え工事を進めていた上越市の新斎場が完成し、2日から供用を開始した。先月29日には市や工事関係者らが出席して竣工式ならびに火入れ式が執り行われ、テープカットなどで新たな施設の完成を祝ったほか、設計・施工担当者に感謝状が贈呈された。
既存斎場の老朽化および今後の火葬需要の増加に対応するため、旧施設の道路を挟んで北西側に建設された新斎場は、RC造一部S造2階建て、延べ床面積2439・46㎡。火葬炉5基のほか、告別室3室、収骨室2室、待合室・待合ホールなどを備える。旧斎場から火葬炉を増設、最新設備を導入することで、火葬時間の短縮とともに1日当たりの最大受け入れ件数、同時受け入れ件数を増加させたほか、広さも旧斎場の1・5倍の規模となり、プライバシーに配慮した待合ゾーンなども設けられている。また屋上には10kWの太陽光発電が設置され、雁木造りをイメージした車寄せには、中郷区岡沢産の杉材が使用されている。
施設の建設は、設計・施工一括のDB方式が採用され、高舘組を代表に中田建設、石本建築事務所、アイ建築研究所で構成されるグループが担当。火葬炉は宮本工業所が施工した。
2022年度に設計、23年度から建設工事に着手。新施設の完成供用により、来年度には旧斎場の解体、跡地整備が行われる。
中川幹太上越市長は「上越斎場は市内の火葬件数の約8割を担っている重要な施設。市民が求める理想の斎場の実現に向けてプロジェクトを進めていただいた熱意と努力に感謝する。日本海を臨むこの場所で、ご遺族が故人をしのび厳かに見送れる新たな環境を整えることができた」と完成の喜びを語った。
建設コンセプトは「上越の手」
設計・施工グループの代表を務める高舘組の高舘徹社長は、「上越でも、これだけできるということを見せたかった」と語る。
施設に入って、最初に目を引く大きな4枚の化粧格子は高土町の「猪俣美術建具店」、さらに装飾硝子は大学前の「ガラス工房falaj」が手掛けている。また待合室のテーブルには東本町2丁目の「吉田バテンレース」のテーブルクロスが使われ、飾られる絵画はひぐちキミヨ氏の作品だ。正面玄関入口の大庇屋根には、中郷区岡沢産の上越産杉材を全面に使用し、何気なく施設内に置いてある椅子も市内産材から職人が仕上げたものだそうだ。
同施設の建設事業コンセプトは「上越の手」。設計・施工に地元建設業が参画していることに加えて、市内の芸術家、工芸家、地域住民や若い力など、施設の随所に上越の技術がちりばめられ、上越市民としての使命感、やる気を集結させた施設をつくり上げている。
高舘社長は「これだけの施設であり大手設計者の力、斎場に精通した力も当然必要であったが、設計と施工で話し合いながら地元上越の職人の力も合わせてチーム力でできた施設」とし、「終わってから各社のメンバーに声を掛けて、一杯飲もうと思っている」と話した。
【写真=供用開始した新斎場、関係者がテープカット、最初に目を引く化粧格子、すてきなテーブルクロス】