国土交通省は、2025年12月からの適用が見込まれる労務費の基準で、契約段階における運用方針案を明らかにした。労務費の基準を活用した適正水準の労務費、受注者による見積書の作成、注文者による見積書への対応について、第3次担い手3法の1年6カ月施行に当たりガイドラインを定める。なお、現段階で15の方針を打ち出している。
方針のうちポイントは大きく3つ。
1つは、労務費の基準が想定する標準的な条件や標準的な歩掛以外で施工する場合の見積り方法について。基準は標準的なケースでの労務費。個々の工事契約は、契約当事者が当該工事現場の施工条件を踏まえて適正水準の労務費の額を算出し、見積りや協議を行う。
小ロット工事など基準の想定よりも歩掛りが悪くなる工事では、基準の額よりも高い労務費が適正となる。逆に施工条件が良い場合は歩掛りが良くなり、基準の額より低い労務費が適正になる。また、ICTなど生産性向上(歩掛りをよくする)で基準よりも低い労務費の額で見積ることは認められるが、その理由を注文者や建設Gメンに対して説明できる必要がある。いずれも場合でも、算出の基本になる公共工事設計労務単価の額は変動させず、歩掛りで変動することになる。労務単価を引き下げると「著しく低い労務費での見積り」として建設業法違反となる。
一方、高い技能を有する技能者が施工する場合、労務費が高くなることは妥当。受発注者間で単価の妥当性について交渉してよい。
二つ目は、元請けや再下請を行う下請けが、受注者側からあらかじめ見積りを取らずに注文者に見積書を提出している場合について。なお、元請は発注者に見積を提出した際には労務費基準を活用して労務費額を算定することになっている。見積を取っていなかった下請から、想定以上の労務費が請求された場合、その見積が基準からみて適正であれば、注文者が上位契約の額を理由に下請契約の労務費にしわ寄せすると建設業法違反になりうる。元請けは自ら負担して適正金額を支払うか、注文者と協議して契約総額を増額する。下請・下請間も同様。ただし、発注者側が、契約変更義務を負うものではない。
三つ目に大手ハウスメーカーが零細下請業者と契約するケースなど、元請や再下請を行う下請が見積を取らずに請負金額を提示する場合。労務費の基準を踏まえた適正水準にするとともに、下請側との価格交渉に対等な立場で応じる必要がある。
なお、適正な見積期間の確保にも触れており、建設業法および政令で予定価格に応じた最低限の日数が決まっており、見積の重要性が高まっている中、十分な見積期間の確保に留意する必要があるとした。