土木学会第112代会長の佐々木葉氏は26日、埼玉県八潮市で発生した下水道に起因する道路陥没事故をうけ、土木学会会員へ向けたメッセージを発信した。「目に見えない地下構造物の損傷、およびネットワークとしてあるライフラインが機能を喪失する事故が及ぼす影響の大きさと回復の難しさを目の当たりにし、そのリスクはこれからもあり続けることを再認識しています。現在も続く事故への対応や構造物の健全性確保にとどまらず、より広い観点からの議論が必要」と警鐘を鳴らしている。
その上で「①道路というインフラの地下には複数のライフラインというインフラが存在していること②これら地下にあるライフラインはいずれも目に見えづらいが、私たちのごく身近にネットワークとして存在していること③上水道と下水道も地域の水循環の一部を担っていること④これらインフラの整備、利用、維持管理には費用がかかり、その負担の仕組みもわかりづらいこと⑤これまでの歴史のなかで作られてきた構築環境のなかで私たちは生きていること⑥幅広い「私たち」の理解と合意がなければ対策は進まないこと―などを視野に入れた上での課題解決の道を見出し、あわせて、インフラを使う私たちが、インフラとともにどう生きていくかを「自分ごと」として考える社会を目指す必要があるのではないでしょうか」と課題と対策法をあげた。
今後については「これだけのことを、一人で、一つの専門やセクターで考えることはできません。私たちの土木学会には、実に幅広い分野の土木技術者がいます。この力を活かし、土木学会は、あらゆる境界をひらき、これまで以上に、インフラメンテナンスとマネジメントのための広い意味での技術に取り組んでいきたいと考えます。そのための対話と議論の場をこれから準備していきます」と指針を示した。
加えて「身近なインフラとどう向き合うか、身近な人と話していただきたい。土木学会には、学会誌という膨大な知のストックがあります。提言や声明もあります。これらも活用しながら、直面する課題に一人ひとりが関心をもち、対話していくことが、社会を、未来をより良い方向に進めていく基礎体力を育むと信じています」と協力を求めている。
メッセージはhttps://committees.jsce.or.jp/chair/112-message_20250226jp 【動画】https://youtu.be/VChmn1i02Qcから見られる。