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群馬県農政部

岸篤志農政部長就任インタビュー

2025/04/26 群馬建設新聞

4月に農政部長に就任した岸篤志氏。弊紙の独占インタビューで、真っ先に本年度早々に発生した豚熱(CSF)について触れ、防疫対応に当たった建設業関係者への感謝の意を表した。2025年度は来年度始動する新群馬県農業農村振興計画の策定に注力していくことや、環境負荷低減・資源循環型農業への転換・推進を重点施策として取り組んでいく考えを示す中、各種施策に対する取り組みや考え方などについて聞いた。

―就任しての意気込みと抱負をお聞かせください

岸 4日に豚熱が発生し、本年度早々から豚熱の対応に追われた。特に埋却地の関係では建設業関係者にお世話になった。おかげで防疫措置を完了することができた。関係者皆さんのご尽力に御礼申し上げたい。

農政部の仕事は「意欲ある担い手の皆さんが持てる力を最大限発揮できるよう環境を整備すること」だと考えている。そのために必要となる土地改良、機械導入・施設整備などを通じて多様な担い手の経営発展に向けた意欲ある取り組みを後押ししていきたい。

26年度から、新たな群馬県農業農村振興計画が始動する。本計画を本年度、しっかりと策定することが私にとって最も大事な仕事だと思っている。また、農政部では環境負荷低減・資源循環型農業を重点的に推進しており、引き続き、部を挙げて取り組み、持続可能な群馬県の農業の確立に注力したい。

―農業・農村のあり方について

岸 農業・農村は、県民にとって不可欠な食料を安定的に供給する機能だけでなく、水源のかん養や国土の保全、美しい農村景観の形成など、多面的機能を有している。

しかしながら、農業者の高齢化や担い手不足、都市化・混住化などにより農地の減少が顕著であるとともに、野生鳥獣による農作物被害の増加等に加え、近年では自然災害や豚熱・高病原性鳥インフルエンザなど、新たな課題にも直面している状況にある。

こうした状況の中、県では「群馬県農業農村振興計画2021-2025」の基本目標である「未来へ紡ぐ!豊かで成長し続ける農業・農村の確立」の実現に向けて、農業・農村が持つ可能性を最大限に引き出し、持続的に発展できるようにするとともに、未来に向け農業者が元気に躍動し県民誰もが豊かさを享受できるよう総合的な施策を展開している。また、昨年6月に改正された「食料・農業・農村基本法」に掲げる「食料安全保障の確保」や「食料システムの確立」、「農村の振興」も視野に入れながら、引き続き「環境負荷低減・資源循環型農業への転換・推進」を重点施策として取り組んでいきたい。なお、農業農村整備事業においても農業水利施設の省エネ化、有機農業や耕畜連携に向けた農地整備、ならびに防災重点ため池の防災・減災対策などに取り組んでいく。

―県が掲げている災害レジリエンス№1に向けた取り組みについて

岸 県では、21年2月に策定した「新・群馬県総合計画」において「災害レジリエンス№1の実現」を7つの政策の柱の一つに掲げている。

近年、気象変動の影響により、頻発化・激甚化する自然災害から県民の命や財産を守るための安全を確保する体制確立に向け、25年までに集中的な取り組みを進めることとしている。

農政部としても「誰もが安心して暮らせる農村地域の実現に向けた防災・減災対策の強化」を重要な柱として、農業農村整備事業を着実に実施し、災害レジリエンスを進めているところである。

特に防災重点農業用ため池195カ所については、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用し、25年度までに、全ての防災重点農業用ため池でハザードマップ作成および豪雨・地震対策に対する安全性能調査を完了させる考えでいる。併せてハザードマップの作成と地域住民への周知によるソフト対策と豪雨・地震に対する対策工事によるハード対策を一体的に推進し、防災・減災対策のスピード化を図っていく。

―群馬県土地改良事業団体連合会との連携について

岸 農業農村整備事業を円滑に進めていくためには、事業の実務を担う「群馬県土地改良事業団体連合会」との連携が不可欠。

連合会は、農業農村整備事業の設計書の作成などの技術的な支援や事務援助のほか、土地改良区の運営や施設維持に関する助言・援助も行っており、現場の最前線で農業農村整備を支えていただいている。

今後も県と連合会がしっかりとタッグを組み、農業・農村を元気にしていきたいと考えている。

―ICT施工や週休2日制などを含む働き方改革の取り組みについて

岸 ICT施工については、一部の工事において試験的に導入しており、施工精度の向上や作業の効率化、現場管理業務の省力化などに効果が確認されている。

一方で、受注業者の設備投資が高額となることや、工事費が割高になるため、市町村や受益農業者の負担金に影響するなどの課題があり、これらの課題の整理を進めつつ、段階的に導入を進めていくことを考えている。

また、建設業界全体の働き方改革の一環として、週休2日制についても群馬県建設業協会と連携し、積極的に取り入れており、徐々に定着が進んでいるところ。

―建設産業へメッセージをお願いします

岸 建設産業に携わる皆さまには、日ごろより本県の社会資本の整備や維持管理、災害対応、さらには特定家畜伝染病にかかる防疫対応にご尽力をいただき、心より感謝している。

特に年明けから年度始めにかけて前橋市内の農場で発生した豚熱に係る防疫措置では、埋却等の作業を迅速・的確・丁寧に実施していただいたことに対して、あらためて御礼を申し上げる。

また、頻発化・激甚化する自然災害に対しては、日ごろから防災・減災対策への備えが重要であるとともに、迅速な復旧対応ができるよう備えておくことが重要であると感じている。

万が一、災害が発生した際には、被害に見舞われた農業者の皆さんが早期かつ円滑に営農が再開、継続できるよう、引き続き、早急な復旧作業へのご協力をお願いしたい。

農政部における公共事業は一般の公共事業と違い、農地整備や農業水利施設の整備、ため池の豪雨・地震対策など多種多様な事業であり、特に工事期間における営農面や地域への配慮など、地元や現場の皆さまの声をよく聞きながら進めていく必要がある。工事に携わる皆さまには、こうした農業農村整備事業の特性をご理解いただくとともに、これまで培った技術や経験を次世代に引き継いでいただき、地域農業の発展のために、われわれとともに歩んでいただきたいと願っている。

今後とも、地域に根ざした活動を通じ、県民の安全・安心を支えていただくとともに、本県農業の振興に引き続きご尽力を賜りたい。

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