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長野県伊那市

まずは進徳館や大手門/高遠城跡保存計画案を策定

2025/05/10 長野建設新聞

 伊那市が史跡高遠城跡の保存活用計画案をまとめた。整備に関しては2026年度を初年度とし、実施する施策を5年ごと3期に分けて示しており、前期では進徳館や旧大手門の保存修理を位置付けている。

 本計画は高遠城跡を適切に保存管理していくため、活用や整備、必要な施策・事業について実施計画をまとめたもの。策定にあたってはワイド(伊那市)へ支援業務を委託した。

 前期(26~30年度)に位置付けたのは、史跡の保存・活用のため必要度が高く早期に着手すべき施策や、短期的な実施が可能な施策。このうち進徳館の保存修理では、建物や外構において、保存管理や公開活用に必要な箇所を修理。特に茅葺屋根は前回の葺き替えから20年以上が経過し傷みが進行しているため、葺き替えを行う。

 旧大手門(移築門)については旧来の位置が民有地であることや、枡形を含め廃城以前の構造が不明確であることから、当面は現地における保存活用とするが、耐震化を含めて検討し、現状を維持するための保存修理工事を行う。

 庭苑「南曲輪」の整備も検討する。絵図や文献史料に基づき、庭園の残存遺構を確認するための発掘調査を実施し、調査結果により整備に向けた検討を行う。地内にある靖国招魂碑やその他の石碑については、整備の方向性が決まった段階で史跡外への移転を含めて関係者などと協議検討し、調整する。将来的な整備を見据え、樹木の植樹は行わない。

 このほか、今後取りまとめる「整備基本計画」において立案する動線計画に基づき、史跡全体の見どころを回りながら高遠城跡の特徴を体感できる園路の検討および整備、中堀や三ノ丸など公有化を行った箇所への看板設置などを行う。

 また、31年度以降の中期には本丸虎口の整備を予定。一部破損し、崩落の恐れがある付近の石垣について、廃城時の遺構の残存状況を調査し、整備方法を十分に検討した上で修理工事を行う。36年度以降の後期には三峰川沿い南急崖の安全対策を記載。土砂崩落や岩盤崩落、落石等が懸念される箇所について、擁壁修理や安全対策工事の実施を検討する。

 本計画案は5月26日までパブリックコメントを募集しており、寄せられた意見も参考に策定。その後、整備に関してより具体的に示した整備基本計画を本年度内に取りまとめる。整備基本計画の策定業務は外部へ委託せず、内部で行う。これに基づき26年度以降、施策を順次実施していく。

 なお25~27年度実施計画では、進徳館の保存修理について3カ年事業費5300万円を見込み、25年度に設計、26~27年度に工事を行う見通しを示しているが、保存活用計画の策定が当初想定から1年ずれ込んでいることから、少なくともスケジュールは1年後ろ倒しとなる。

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