内閣府が設置する規制改革推進会議のデジタル・AIワーキング・グループは8日、デジタル・AI技術を活用した建設機械の安全義務・技能要件のあり方について議論を行った。会議ではコベルコ建機と大林組が、遠隔施工における安全義務の明確化について提言を示した。
人手不足が続く建設業界においては施工におけるデジタル技術活用が重要となっているが、一方で「労働安全衛生規則が技術進展の阻害になっている」との声があることから、今後の方向性について議論した。
コベルコ建機は、安全義務に関する現状課題として◇現状の労働安全衛生規則では、遠隔操作の場合にどのような条件・対応で安全義務が満たされるのか不明瞭(人が直接搭乗して操作することを前提としているため)◇個々の現場任せのため過剰な安全対策となり、運用コストが削減できずシステム導入の費用対効果が出ない◇過剰な安全対策により、作業の効率性が失われ生産性が落ちる―と説明した。
そのうえで要望事項として、遠隔操作の場合に必要となる労働安全衛生規則上の安全義務について「事業者が事前に予測・判断出来るよう、ガイドラインなど方向性を示してほしい」と述べた。
同社は免許・技能要件についても3つの課題を提示。課題は◇実機操作とは違う遠隔操作固有の習熟が必要◇実機操作とは違う遠隔操作固有の教育が必要◇遠隔操作インターフェースが多様化した場合でも安全性や生産性を維持する必要がある―とした。
要望事項として「遠隔操作に必要となる免許・技能講習の要件を検討してほしい」と示した。
大林組は、建設機械の労働安全衛生の課題として◇新技術を活用する場合の安全に関する考え方は不確実性を確実に回避するための措置が過剰で、技術を生かすことが難しい対応を迫られる◇新技術活用など時代に即した安全に関する検討を行う体制が整備されておらず、常に「現状の安全に関する考え方」を基本とした検討を行うため、過剰な安全対策を求められることが多い―と説明した。
同社は規制緩和に向けた提言として①時代の流れに即した安全義務(労働安全衛生規則)の運用②時代の流れに即した免許・技能講習要件―の2点を求めた。
国土交通省は、遠隔施工に関する取り組みを説明。さらに安全ルールの今後について◇無人エリアで自動施工を実施する上で必要な各種要件を整理する◇関係省庁とも連携し、自動施工の実装を推進する―と述べた。
労働安全衛生を管轄する厚生労働省は、遠隔施工など無人運転の機械を使用した作業時の労働災害防止に必要な措置として◇他の機械との衝突、周辺作業者への接触防止◇運転操作性の確保◇停止時・トラブル時の安全確保◇運転者(操作者)に求められる技能の確保―を説明。今後について、運転制御方式や周辺環境について専門家や関連団体から機械別の現状や将来ニーズを聞き、最低限必要な労働災害防止措置について1年をかけて検討する―と述べた。
また遠隔施工に特化した資格創設について、国交省は「担い手確保の観点からも期待する」と回答。厚労省は「視野が狭いことや通信エラーもあるので、遠隔施工の資格化は難しい」と述べた。
議論の結果として、遠隔施工における安全義務について、厚労省は25年度内に検討会を設置し、26年上期までに内容を整理することとした。さらに、労働基準監督署に遠隔操作や無人化について相談した際、署ごとのローカルルールが発生しないよう、厚労省本省に窓口を設置して対応することで決定した。