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北西部道路整備に注力/行政の枠超えた連携検討/熊谷俊人知事 2期目就任インタビュー

2025/05/12 日刊建設タイムズ

 3月16日投開票の第22回千葉県知事選挙で再選を果たした熊谷俊人氏が、日刊建設タイムズの独占インタビューに応じた。1期4年の成果を礎として、2期目においては、半島性を克服する交通インフラの充実、成田空港を核とした産業拠点形成、企業誘致および産業用地の創出、「防災県・千葉」の確立に向けたインフラ整備を加速。県北西部においては、国と連携した高速道路ネットワークに加え、県施行の県道・国道の整備に注力する。また、地域のインフラ整備・管理を効率化するため「県と市町村の行政の枠を超えた連携について検討を進めている」と話した。


 ――2期目に当たっての抱負は。


 熊谷 2期目の選挙で85・9%の得票率をいただき、責任の重さを痛感している。職員の奮闘、そして建設業など関係する皆さま方の協力の下、「チーム千葉」でやってきた4年間に評価と期待をいただいた。特に力を入れてきた経済、インフラ整備、防災を次の4年間の基盤として、より多くの方々に好循環を実感していただけるような政策を進めていかなければならない。


 ――1期4年の成果を踏まえて掲げた選挙公約「県政ビジョン2025」のうち、半島性を克服する交通インフラの充実について。


 熊谷 広域的な幹線道路ネットワークの構築は、半島性の克服、成田空港の機能強化による効果の県内全域への波及、平常時・災害時の人・モノの流れの確保にとって大変重要。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)については、2026年度の全線開通に向け、県内の各区間で精力的に工事が進められている。北千葉道路に関しては、市川・松戸が新規事業化された。その先の区間については「用地取得促進プロジェクトチーム」を設置し、先行して用地取得を進めていく。


 ――新規事業化が期待される路線は。


 熊谷 新湾岸道路、千葉北西連絡道路の実現に向け、「オール千葉」で国への働き掛けに取り組んだことにより、計画の具体化に向けた検討が加速している。


 ――圏央道の整備効果を波及させるアクセス道路や、2期目に力を入れる県施行の道路事業は。


 熊谷 銚子連絡道路と長生グリーンラインの一部区間が開通し、地域の方々に利便性の向上を実感していただいているのではないか。また、県北西部においては人口が増えている一方で、道路整備が追いついていない。そのため、国と連携した高速道路ネットワークだけではなく、例えば船取線(主要地方道船橋我孫子線)など県施行の県道・国道の整備にも、今まで以上に力を入れていかなければならない。


 ――成田空港を核とした産業拠点形成について。


 熊谷 成田空港に関しては、この4年間で大きく前進した。地域未来投資促進法による土地利用の弾力的活用により、2件の物流プロジェクトが動き出している。さらに、集積を目指す産業に航空宇宙関連など5つの分野を追加した。


 ――企業誘致について。

 

 熊谷 過去最高の実績を出しており、今後も順調に立地が進むと考えている。産業用地が不足しているため、市町村および民間と連動して有望な場所の選定と整備を進めており、次の4年間で十分に波及効果を感じてもらえると思う。


 ――「防災県・千葉」の確立に向けたインフラ整備は。


 熊谷 河川整備、土砂災害対策、海岸保全などを着実に推進する。また、水道、下水道の更新・耐震化を進める。県内の水道事業体による施設の耐震化などに対する補助制度を創設した。国の補助に県独自の上乗せを行うもので、これにより県内のさまざまな地域で水道管路の整備が進むと考えている。


 ――建設業を取り巻く諸課題への対応について。


 熊谷 建設業の皆さまと話をすると、必ず人手不足が話題に挙がる。入札不調も深刻な状況になっている。建設業の担い手の確保を支援していくとともに、より生産性の高い形で工事を発注していかなければならない。


 ――担い手確保に向けた具体的な対策は。


 熊谷 まずは、建設業を志す人を増やしていかなければならない。小中学生の頃から、ものづくりやインフラを支える仕事の楽しさとやりがいを実感してもらため、千葉県建設業協会の皆さまにも協力いただきながらマインクラフトコンテストなどを行っている。さらに、建設業の女性の活躍を紹介する冊子「けんせつ姫」を小中学校に配布するなど、新たな働き手を確保するために応援している。進路指導の先生や保護者も意識した形で、建設業の魅力や将来性を伝えるべく、教育委員会と連携している。


 ――働き方改革や生産性向上などの取り組みについて。


 熊谷 週休2日制の推進、ICT活用の普及、ASPの活用拡大などに取り組んでいる。また、現在は県と市町村それぞれが地域のインフラ整備・管理を地元の事業者の皆さま方に発注しているが、効率化を図るため、行政の枠を超えた連携について検討している。建設業の皆さま方とも意見交換しながら、最適解を見つけ出したい。


 ――日頃のインフラ整備はもとより、自然災害や家畜伝染病など発生時にも尽力する地域の建設業について。


 熊谷 知事としておととしの豪雨災害、千葉市長としては東日本大震災と令和元年房総半島台風の際に、建設業の皆さま方に協力いただいた。家畜伝染病の対応についても多大なる貢献をいただいている。地域の建設業の存在が県民の皆さまの支援や備えとなっていることを、折に触れて発信するようにしている。これからも、地域のインフラ整備・維持管理と危機管理への協力をお願いしたい。


〈略歴〉

 くまがい・としひと

 1978年、奈良県生まれ。46歳。2001年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。同年、NTTコミュニケーションズ入社。07年、千葉市議会議員選挙で当選。09年、千葉市長選挙で当選し、全国最年少市長(当時)、政令指定都市最年少市長となる。14年、ワールドメイヤー(世界市長賞)ノミネート。17年、千葉市長選挙で再選。21年、第21回千葉県知事選挙で当選。3月16日投開票の第22回千葉県知事選挙で再選を果たした。趣味は登山、ランニング、歴史。

熊谷俊人知事

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