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群馬県環境森林部

永井浩二環境森林部長就任インタビュー

2025/05/10 群馬建設新聞

4月より県環境森林部長に就任した永井浩二氏。本年度から新しい技術やアイデアを持つ異業種・異分野の民間企業の参入を促すため「ぐんま森林・林業イノベーションプラットフォーム」の構築を予定するなど、県内の森林や自然資源を生かすことで、新たな価値を創出し、地域の持続的な発展につなげていく考えを示す。このような中、災害レジリエンス№1に向けた取り組みやICT施工・週休2日制などを含む働き方改革への取り組みなどについて聞いた。

―就任しての意気込みをお聞かせください

永井 このたび環境森林部長を拝命し、生まれ育った群馬県の豊かな自然環境を守りながら、次の世代につなげていく喜びとともに、責任の重さを感じている。

いま、群馬県の森林や自然資源を生かすことで、新たな価値を創出し、地域の持続的な発展につなげていくことが重要と考えている。皆さまのご協力をいただきながら、時代の変化・要請に応じた取り組みを着実に進めてまいりたいと考えているので、よろしくお願いしたい。

―座右の銘をお聞かせください

永井 「君子固(もと)より窮す(立派な人間は困難な場面に出会っても、平然としているものだ)」…孔子と弟子たちが、旅の途中で食糧が尽きるほど困窮した際、憤慨してねじり寄った弟子に返した言葉とされ、困難な場面にあって目線が低くなりそうになると思い出すようにしている。

―災害レジリエンス№1に向けた取り組みについて

永井 近年、全国各地で局地的な豪雨や異常気象が相次ぎ、自然災害の脅威が身近なものとなっており、群馬県においても、地球温暖化の影響などによる、山地災害等に対するリスクが増大している。

こうした状況の中で、群馬県では「災害レジリエンス№1」を目指し、県土の強靱化に向けた防災・減災対策を積極的に進めるため、国が推進する「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」などを最大限に活用し、山地災害の復旧や予防、老朽化した施設の長寿命化などに取り組んでいる。

また、防災力の向上を図るためには、県土の3分の2を占める森林の強靱化が重要。森林整備や治山事業を推進し、土砂災害の未然防止とともに、豊かな自然環境の保全にもつなげることで、県が掲げる「ぐんま5つのゼロ宣言」のひとつ、「自然災害による死者ゼロ」を目指していく。災害に強く、誰もが安心して暮らせるまちづくりに向け、これからも着実に歩みを進めていきたい。

―群馬県測量設計業協会と連携し進めている森林境界明確化の取り組みについて

永井 森林所有者の不在村化や世代交代により、所在や隣接地との境界がわからなくなる森林が増えていくのではないかと危惧している。

境界が不明確な森林では、間伐などの森林の整備や管理を行うことができないため、森林の有する水源の涵養や国土保全などの多面的機能の発揮に支障をきたす。

このため、県では2023年度から豊富な実績とノウハウを有する群馬県測量設計業協会と連携し、森林境界明確化に向けた取り組みを進めている。

23年度は森林境界の確認作業を効率化するため、リモートセンシング技術を活用して現地計測と検証を行い、その結果に基づき森林境界明確化のマニュアルや仕様書を作成した。

24年度には、市町村担当者などを対象とした研修会を開催し、市町村における森林境界明確化業務を外部委託するために必要な支援を行った。

引き続き、群馬県測量設計業協会と連携を図り、市町村における本マニュアルの活用を進め、森林境界明確化に向けた取り組みを推進していきたいと考えている。

―ICT施工や週休2日制などを含む働き方改革の取り組みについて

永井 建設業にも「働き方改革関連法」が適用され、時間外労働の上限規制や労働環境の整備が求められるようになり1年が経過した。

森林土木工事における週休2日制の取り組みは、多くの企業で実施され定着が進んでいると感じている。ICT施工は、急峻狭あいという地形が多く活用が進んでいないが、危険な崩壊斜面の地形データをレーザー測量により取得するなど、一部では活用の有効性が確認されており、引き続き活用方法の検討をしていきたい。

―林業・山村のあり方について

永井 かつて、林業は山村地域の主要な産業であり、雇用を創出し、地域経済を支えるなど重要な役割を果たしていた。

また、林業生産活動などを通じて森林の整備や管理を行うことで、森林の多面的機能の持続的な発揮に重要な役割を担い、山村だけではなく都市に住む人々に対してもさまざまな恩恵をもたらしている。

しかし、山村の過疎化・高齢化の進行、木材価格の低迷などにより、山村地域に住む方々の林業に対する意識が変化し、適切な管理が行われない森林が増加していると考えている。

このような中で、本県の豊富な森林資源を循環利用することで、適切な整備・管理を促進し、豊かな森林を次代に引き継ぐため、20年度に「群馬県森林・林業基本計画2021-2030」を策定した。

計画では「林業の競争力強化」「森林の新たな価値の創出」「森林の強靱化」の3つの基本方針のもと、各種施策を総合的に実施している。主伐再造林による森林資源の循環利用を一層促進するとともに、林道などの林業生産基盤や木材加工流通施設の整備、林業労働力の確保・育成、木材流通改革など、需要創出と生産体制構築を両輪とする林業改革を進めたいと考えている。

また、本年度は新たに、新しい技術やアイデアを持つ異業種・異分野の民間企業の参入を促すため「ぐんま森林・林業イノベーションプラットフォーム」を構築する予定となっている。

これらにより、山村にある豊富な森林資源をはじめとする地域資源を最大限に活用し、山村地域の活性化に寄与したいと考えている。

―地域建設業へのメッセージをお願いします

永井 平素より、森林土木工事の実施を通じて、地域の安全・安心の確保に多大なるご尽力をいただき、心より感謝している。さらに、山地災害の危険性が高い「山地災害危険地区」の施設点検や「山地防災ヘルパー」としての情報収集など、日ごろから県の防災・減災対策にご協力いただいていることに、深く感謝申し上げる。

また、災害発生時には迅速な応急対応や復旧作業に尽力されているほか、豚熱や鳥インフルエンザといった家畜伝染病の防疫作業においても大きな役割を担っていただいており、建設業界の皆さまは地域の暮らしと命を守るうえで、なくてはならない存在。今後とも、質の高い社会資本整備を通じて、県民の安全・安心と幸福度の向上にご協力いただきたい。

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