国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所は、川俣ダム(日光市)で岩盤PS(プレストレスト)アンカーの更新2期工事に着手する。堤体を支持する岩盤の左右岸に計65本のアンカーを定着させてダムを安定させる計画で、アンカーの最大長が70m。2025年度は堤体改良費9500万円を予算化。左岸の岩盤に工事用道路を確保するため設計でルートと工法を検討。PSアンカー工の設計を委託し施工計画を固める。工事用道路は約100m、施工時の資機材を搬入できる幅員3mを確保。全長がほぼ岩盤を貫くトンネルとなる。
川俣ダムは1966年に完成したアーチ式コンクリートダム。洪水調節やかんがい用水の供給、発電などを行う多目的ダム。稼働から約60年が経過し、堤体を支持する岩盤基礎の劣化が目立つようになった。1期工事は17~20年度に実施。岩盤PSアンカー工59本の更新を完了している。
2期工事では露出面積の広い左岸に57本、右岸に8本の計65本のアンカーで更新する計画。アンカーは防食性に優れる内部充てん型エポキシ樹脂で被膜したPC鋼より線を7つ束ねてできた部材を採用する予定。
アンカー施工にあたり1期工事では、堤体下流側に足場を組む仮設工事を実施。仮設費のコスト高と資機材運搬に多大な労力と時間を費やした。
2期工事では効率化を図るため左岸側に工事用道路を整備する。地質調査を通じて堤体に影響のないルートを選定。発破で岩盤を砕き削岩機で崩してトンネルを整形するなど最適な工法を検討する。
地質調査は基礎地盤コンサルタンツが担当。6月末にも成果をまとめる。工事用道路(トンネル)の設計はドーコン。地質調査の成果を踏まえ年内を目途に設計を仕上げる。
岩盤PS施工計画検討業務はダム技術センター・日本工営JV、PSアンカー工の設計コンサルは選定中。月内にも決定する見通し。
岩盤PSアンカー工を採用し建設したのは川俣ダムのほか川治ダム(日光市)。川治ダムは1983年に完成したアーチ式コンクリートダム。稼働から約41年が経過している。
同事務所では12日に簡易公募型プロポーザル方式で川治ダム長寿命化検討業務を公告。ダム建設時に本体左右岸の基礎岩盤補強用に設置された岩盤PS工の現状を把握。長寿命化を図るため老朽化対策に必要なモニタリング計画を検討する。