委託業務で最低制限価格制度を導入していない県内の市町村に、委託関係8団体が導入を働きかけた結果、導入率は活動開始時点のおよそ5割から今年4月時点で9割まで増加した。活動の成果には、共通の課題解決に向けて8団体が一致団結して3年間にわたり活動を展開したことが大きな要因。算定基準も、価格設定レベルが低かった6団体が国交省基準に見直すなど一定の成果があったが、工事と比較すると委託業務は1割強の差があるとみられることから、今後は最低制限価格の設定レベルのアップや算定式公表を働きかけていく。
委託関係8団体とは埼玉県建設産業団体連合会(埼玉建産連、伊田登喜三郎会長)に加盟する埼玉建築士会(丸岡庸一郎会長)、埼玉県建築士事務所協会(佐藤啓智会長)、埼玉建築設計監理協会(神田廣行会長)、埼玉県測量設計業協会(及川修会長)、埼玉県地質調査業協会(越智勝行会長)、埼玉県設備設計事務所協会(金子和已会長)。賛同2団体は、埼玉県建設コンサルタント技術研修協会(小山一裕会長)、日本補償コンサルタント協会関東支部埼玉県部会(金井塚一哉会長)。
国土交通省の「2021年度業務に関する運用指針調査」によると、21年7月時点で最低制限価格制度を導入していたのは県内の32団体(51%)にとどまっていた。こうした状況に危機感を持った県内の委託関係8団体は、埼玉建産連がまとめ役となり、埼玉建築設計監理協会の神田会長を座長として意見交換を重ね、22年度から取り組みを開始。22年度は、制度未導入の31市町村に郵送や市長面談等で制度導入を働きかけた。翌23年度は次の段階として、制度未導入のほか、設定レベルが低かったり、算定式が非公表の24市町村に郵送で要望書を提出。24年度は同様の内容で23市町村に郵送で要望書を提出した。さらに県も各市町村への個別訪問や契約担当課長を集めた会議等で働きかけを行った。
24年度に委託関係8団体は、各市町村の制度導入の有無、最低制限価格の算出方法や設定率を調査。未導入や設定レベルが低い、さらに算定式が非公表の23市町村に対し、制度導入や改正の考え、実施予定時期について回答を求めた。
こうした3年に及ぶ活動の結果、委託関係8団体が調査したところ、今年4月時点で同制度の導入済市町村は57団体(91%)となり、21年7月調査の32団体(51%)から大幅に増加。未導入は6団体のみとなり、そのうち1団体も本年度中に導入予定となっている。また、設定レベルの低い6団体は23年度以降、国交省基準へ見直した。
14日に開かれた記者会見で埼玉建産連の伊田会長は「今回のように委託関係団体が足並みを揃え、一致団結して取り組みを行うのは画期的なこと」と意義を強調。
座長を務めた神田会長は「8団体が集まって3年になるが、このような成果が出てきたことは皆さんのおかげ。ただ、実質はそれほど上がっていないという声もある。今後の取り組みは、制度導入とともに設定レベルがアップされるよう、今後の行動につなげたい」と述べ、今後も委託関係8団体で意見交換を行い、必要な取り組みを行っていく考えを示した。
越智会長は「品確法の原点に立ち返り、適正な基準価格を設定していただき、委託業務それぞれの業種に反映していただきたい」と述べた。
丸岡会長「8団体が集まって同じベクトルでやったことは一つの成果。私の住む西部地区は、まだ未導入の自治体も残っているので、活動も道半ば。この活動を続けていけばご理解をいただけると思っている」と期待した。
佐藤会長は「8団体が行ったことに意義がある」としながら、「物価上昇により日本では賃金が上がったと言われているが、建築業界はまだ低い。われわれの業界でいえば、仕事も人も大手の事務所にいっている現状。品確法に沿ってやってほしい」と早期の改善に期待した。
金子会長「これからは最低制限価格の目標値を工事並のところとしたい。設計コンサルは80%を切っている状況もある。1割、2割はとても大きく、これが上がってくれば、人材確保や社員教育にも充てられる」と工事並のレベルになることに期待した。
及川会長は「価格が最低制限値に集まり、同額入札で抽選になることに困っている」と述べ、これからも共通の課題を8団体で協力して要望したいとの考えを示した。
金井塚会長は「今回、8団体に加えていただき活動できたことは非常に有意義だった。人材確保、仕事量確保といった共通の課題解決への活動に参加していきたい」と今後の活動に期待を寄せた。
写真=埼玉建産連と委託関係8団体のトップ