国土交通省が設置する中央建設業審議会の労務費の基準に関するワーキンググループ(WG)が3日に開催され、労務費・賃金支払いの実効性確保に関する議論が行われた。議論では労務費・賃金支払いにおける情報提供体制の構築、国による悪質事業者の公表などで、詳細は今後の検討としながらも大筋で合意となった。一方で、労務費・賃金の適正な支払いの表明や情報開示への合意を標準請負契約約款に追加する『コミットメント制度』の導入については賛否が分かれて結論に至らず、継続で検討することとなった。また処遇改善事業者証の発行や支払い状況確認・調査などについては同じく継続審議とし、2027年度に結論を出すこととなった。
実効性確保策の一つは『デジタルを活用した情報提供制度』。希望する技能者が給与明細や労働日数、勤務経験(CCUSなど)の情報をシステムに入力して通報。これを活用して建設業者への調査を行う。法令違反が疑われる場合は建設業者への指示や発注者への勧告を行う。システム設計・構築は2026年度に実施する。27年度にはシステム試行運用を開始し、第三者による管理を行う場合はシステムを移管する。
『国による事業者の公表制度』(事業者の見える化)では、悪質事業者の社名公表基準について25年度に考え方を整理。26年度には悪質事業者を国交省HPなどで公表開始する。
労務費・賃金の適正な支払いについての表明や情報開示への合意(コミットメント)を標準請負契約約款に選択的条項として追加する『コミットメント制度』は、12月約款改正などの時期や内容などについて意見が賛否に分かれたこともあり、結論を次回会合に持ち越すこととなった。
『処遇優良事業者証の活用』は、希望する建設業者が技能者への賃金支払い状況をシステムに入力。賃金が一定水準を上回っている場合に処遇優良事業者証を交付するというもの。国と第三者機関との役割分担やコスト負担について、27年度に結論を出す。
『支払い状況確認・調査』は、第三者機関が技能者から賃金支払いの通報・相談を受け、発注者や元請からの情報を基にして技能者を雇用する事業者に賃金支払い状況の開示を要求(下請の場合は注文者の下請事業者への労務費支払い状況の開示を要求)。問題がある場合は適正化指導を行い、結果を国・都道府県に情報提供する。これについても27年度に結論を出すこととなった。