建設業労働災害防止協会千葉県支部柏分会(戸邉昌之分会長)の主催による「2025年度安全大会」が6月26日、柏市内のザ・クレストホテル柏で開かれた。会員58社が参加し、安全教育の徹底や安全管理体制の確立など、安全意識の高揚を図るために労働災害の防止に全力で取り組むことを決意する「安全大会宣言」を採択。柏労働基準監督署の松井祐介署長、県柏土木事務所の近藤久二所長らによる来賓祝辞のほか、柏労基署安全衛生課の中山昂課長が「最近の労働安全衛生法の改正など」についての安全講話を実施。組織活力UPコンサルタントで、自律型人材育成トレーナーなどの肩書を持つ豊山とえ子氏を講師に迎え、「安全安心な環境づくりにかかせない『絆』とは?」~周囲に笑顔をもたらす絶妙なコミュニケーション術~をテーマに特別講演も行った。『安全意識の啓蒙活動』と称され、開始から30余年が経過した現在も、会員299人(31社)から401点の作品が寄せられた「安全標語」では、優秀入選者として、最優秀賞1件、優秀賞3件、佳作10件を表彰した。
「安全標語」入選者を表彰
主催者を代表して戸邉分会長は、柏分会において「2年連続死亡無災害の継続」を報告するとともに、会員に対して「ひとえに各位の日頃からの安全に対する尽力の賜物である」と賛辞を贈った。
しかし、自身が建災防千葉県支部長の立場から、県内建設業では一昨年が10件、昨年は9件の死亡災害が発生し、第9次建設業労働災害防止5か年計画(2023年~27年)の目標である「8件以下」に届かなかったことに加え、本年はこれまでに、3件の死亡災害が発生したことに言及。「安全作業を優先していれば、死亡災害にならぬものもあった」と述べるとともに「作業にあたり今一度、確認して慌てずに安全第一を優先し、作業員がみんなで声を掛け合い、安全作業に従事して頂きたい」と強く呼びかけた。
さらに、6月からは職場における熱中症対策の強化で、事業者に対する早期発見のための体制整備、重篤化を防止するための措置の実施手順の作成、関係作業者への周知が義務付けられたことを説明。これらを踏まえて戸邉分会長は、来賓の県発注者に向けて「熱中症による救急要請は事故ではなく、あくまでも(熱中症という)病気での要請である」とし「マイナスの評価はなしでお願いしたい」との理解を求め、あいさつとした。
良い流れを止めず無災害を追求して
労働行政を代表して柏労基署の松井署長も、管内建設業における死亡災害が2年半以上にわたりゼロ災を継続していることを紹介。「県内にある8つ労基署の中でも、建設業が近年で2年半以上、死亡災害ゼロを継続しているのは柏署のみである」とし、全国をみても「(工事量などで)柏署と同等規模の労基署による、これだけの期間の建設業死亡無災害は見当たらない」と胸を張った。
その成果に対しては「建設業に携わるみなさんの努力があってこそ成し得ることができたもの」との賛辞を贈るとともに「唯一無二の監督署であるということを、私としても大変誇りに思っている」とし「本日の安全大会を良い機会として、この流れを止めることなく、各現場において引き続き、無災害を追求して頂きたい」と力を込めた。
熱中症への警鐘とさらなる安全意識
県の発注機関を代表して、柏土木事務所の近藤所長は、建設業における現場の技能労働者の急速な高齢化や若者離れが深刻化する中で、昨年4月から時間外労働の上限規制が適用されたことに言及。県としても「建設業が地域の守り手として持続的に発展できるよう、働き方改革や生産性の向上に努めることが重要だ」との考えを示した。
現在、職場環境の改善による担い手確保の取り組みとしては「完全週休2日制やICT施工技術の活用推進、フレックス工期の拡大などが着実に成果を上げている」とし「さらなる業務効率化を図るため、ASP情報共有システムや、離れた場所からマネジメントができる遠隔臨場などの普及に努めている」と説明。
東葛飾管内での県発注工事の事故については「22年度で7件、23年度で3件、24年度で6件発生した」と報告。それらの対策として「県では一定規模の工事について、設計段階で安全審査を行い、適正な仮設費用、安全対策費用の計上に努めている」とし、今後とも引き続き「安全パトロールを実施し、引き続き事故の防止に向けた取り組みを強化していく」との方針を示した。
これからは「猛暑による過酷な作業環境により、事故のリスクが高まる季節となる」との警鐘を鳴らしたうえで「さらなる安全意識と安全対策の向上に努めて頂きたい」と呼びかけた。
労災防止計画での目標値達成めざす
同じく、建災防千葉県支部の堀内利男・専務理事は、2023年4月にスタートした国の第14次災害防止計画と併せて、建災防独自の第9次建設業労働災害防止計画(いずれも5か年計画)を進めていることに言及。その計画の中で「死亡災害件数と、死亡災害の中でも発生件数の多い墜落転落災害の減少目標を掲げているが、いずれも目標値よりも多い件数となっている」と指摘。残された計画期間中での目標達成に向けて「より一層の取り組みの強化を図る必要がある」との考えを示した。
最後に、本日の安全大会を契機に「日頃の労災防止活動がさらに活性化し、柏分会の益々の発展、会員各事業現場での無事故無災害を祈念する」と述べ、祝辞を結んだ。
最優秀賞に谷瑛奈さん/2025年度安全標語
【2025年度安全標語入選作】
〈最優秀賞〉
○危険箇所 毎日同じと限らない 目線を変えて 安全確認 いつも初心でゼロ災害/谷 瑛奈(浅野さく泉管工㈱)
〈優秀賞〉
○小さなヒヤリも 再確認 小さな気づきも 再確認 全員が 見過ごさないで 災害ゼロ!/齋藤明美(㈱コスモ工業)
○確かめて 目先・指先・その足元 危険の芽を回避して 明日につなぐ職場の安全/太田睦実(大栄総建㈱)
○顔色ヨシ!体調ヨシ! 見守り声かけ 互いに確認 小さな異変を見逃さず 皆で防ごう熱中症/小倉良子(㈱藤田土木)
〈佳作〉
○慣れた作業も手元が狂う 基本に戻って再確認 「しない・させない」不安全行動/佐藤洋輔(㈱ダイエックス)
○皆で磨こう気づける力 小さな改善 大きな安全/鈴木孝則(㈱コスモ工業)
○あれ? おかしいぞ その違和感を無視するな 作業を止めて 安全確認/宮腰昌典(㈱コスモ工業)
○安全作業は 知識・経験・危険予知から 担い手に繋げよう安全連鎖/安蒜敏一(㈱イズミ)
○目指せ職場のゼロ災害 そこは危険と声掛けあって 決まりを守って安全作業/飯田政弘(㈱イズミ)
○災害は慣れと焦りの過信から 一旦手を止め 安全確認/吉峯啓太(㈱イズミ)
○見る目を変えれば危険の目 0災目指して摘み取る芽/野方裕理(浅野さく泉管工㈱)
○慣れたことは確実に 難しいことはシンプルに みんなで考え 危険回避/佐藤祐吾(三良建設㈱)
○持とう「心配」 やろう「心配り」 みんなで現場のゼロ災害/平岡将征(東葛工業㈱)
○気を抜くな!慣れと過信は事故の元 早めの確認 早めのブレーキ 止める勇気に事故はなし/村山照国(上国興業㈱)
【安全大会出席会員】
〈松戸地区〉(14社)
▽㈱岡本組▽㈱グッドユース▽幸和建設興業㈱▽㈱ダイエックス▽㈱高松管工▽日本サービス㈱▽野村建巧㈱▽㈱藤田土木▽増田産業㈱▽三良建設㈱▽㈱湯浅建設▽㈱吉岡建設工業▽㈱六和建設工業▽渡辺電機水道㈱
〈柏地区〉(15社)
▽会田電業㈱▽青山建設㈱▽㈱荒木工務店▽㈲石塚土建▽㈱石浜建設▽入吉吉田工業㈱▽㈲エイト・テック▽㈱永和建設▽㈱岡野組▽㈱コスモ工業▽㈱柴田建設▽日進建設㈱▽福田建設㈱▽㈱丸昭開発工事▽㈲安建設
〈野田地区〉(11社)
▽浅野さく泉管工㈱▽愛宕建設工業㈱▽㈱飯塚緑化土木▽浦辺建設㈱▽創英建興㈱▽大現建設㈱▽東葛工業㈱▽戸邊建設㈱▽㈱堀建設▽丸要建設㈱▽山本建設工業㈱
〈流山地区〉(7社)
▽㈱イズミ▽㈱市村工業▽SMCテック㈱▽大栄総建㈱▽㈲タツミ建設▽照国建設工業㈱▽富田建設工業㈱▽㈱中村組
〈我孫子地区〉(8社)
▽㈱板橋建設▽海野建設㈱▽上村建設工業㈱▽小池起業㈱▽芝原工業㈱▽㈱ダイカン▽立沢建設㈱▽博正建設㈱
〈鎌ケ谷地区〉(2社)
▽㈱大野信号設備工業▽小池建設㈱
【安全大会来賓】
▽松井祐介・柏労働基準監督署長▽中山 昴・同安全衛生課長▽佐々木寛之・県東葛飾土木事務所次長▽近藤久二・県柏土木事務所長▽横須賀 努・県柏区画整理事務所長▽土屋文孝・県流山区画整理事務所長▽青柳 修司・同次長▽石井一宏・県手賀沼下水道事務所長▽堀内利男・建災防千葉県支部専務理事
【安全安心な環境づくりにかかせない「絆」とは?~周囲に笑顔をもたらす絶妙なコミュニケーション術~の特別講演から】
〈身体の視野〉
一つのことばかり考えながら歩いていると、周りのことがあまり視野に入ってこなくなる。集中することは良いことだが、一歩立ち止まって周囲に意識を向けることも、安全確保にとって大切なこと。経験豊富な人によくある傾向は「こうだ」と信じ込むことにより、他のものが見えなくなるということ。これも安全を構築する上では大きな弊害となってくる。
〈心の視野〉
偏った物事の捉え方は、やる気を奪い、働く意欲を奪ってしまう。こうだという決めつけをしていないか。他にも選択肢があると知っておいてほしい。
〇悲劇のヒロイン=みんな私を認めてくれない
〇べき論=私はこうしなければならない
〇レッテル貼り=私は駄目な人間だ
〇自己責任=失敗したのは私が早く帰ったから
〇他己責任=自分は悪くない。あの人のせいだ