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「大草谷津田いきものの里」が完成

2006/05/03 日刊建設タイムズ

 千葉市が整備を進めていた「大草谷津田いきものの里」がこのほど完成し5月20日、オープンの運びとなった。

 この事業は、同市が谷津田保全モデル事業として進めているもので、ふるさとの原風景であり多様な生態系を有する谷津田の自然を保全し、市民が身近に自然とふれあい自然について学ぶ場を提供するために整備したもの。

 今後は市民、農家、専門家、学校、行政など多くの主体が連携した管理運営体制を構築していく方針で、目標も具体的で分かりやすいものにしている。長期的には、「コウノトリと共生する里づくり」を、短期的には「ホタルやメダカと共に暮らす里づくり」を目標としている。

 保全手法としては土地所有者と保全協定を締結。1㎡あたり年額10円の奨励金を協定締結者に交付する。総事業費には約6700万円を見込んでいる。

 開園記念式典を今月18日、午前10時から同施設の入口広場で行う。

 以下、整備内容など概要は次のとおり。

 ■概要

▽名称=大草谷津田いきものの里

▽所在地=若葉区大草町及び北谷津町の一部

▽計画面積=約26ha(谷津田及び周辺樹林等)

▽自然環境=大草谷津田いきものの里は、谷津の地形が改変されず、湿田・湧水・土水路等の伝統的な水田環境や、雑木林・照葉樹林・竹林等の自然環境が良好な状態で残されている。

 こうした環境に適応してニホンアカガエルやヘイケボタル、リンドウやヤマユリなど、千葉市レッドリストで「A:最重要保護生物」に選定されている希少な野生動植物が数多く生息・生育している。

【整備内容】

 (1)自然再生ゾーン

 谷津田や樹林等からなる谷津の環境を復元・整備した。谷津田再生エリアでの田んぼづくり、樹林再生エリアでの森づくりが体験できる。

 <1>谷津田再生エリア(約1・5ha):湿田、畦、土水路、湧水、湿地等

 <2>樹林再生エリア(約1・5ha):雑木林、竹林、斜面林、炭焼窯跡等

 (2)自然観察路(約1・5km)

 四季折々の自然とふれあい親しめるよう自然観察路を整備した。コースの見どころには自然解説板を設置し、一人でも自然や生き物について学ぶことができるセルフガイド方式を採用した。

 <1>観察路:未舗装、一部チップ敷き・木製階段

 <2>標識板:総合案内板2基、解説板10基、方向指示板10基、注意標識7基、制札2基

 (3)入口広場(約1500㎡)

 駐車場17台(砂利舗装)、水洗トイレ(大2、小1)、詰所、倉庫、足洗い場等

【今後の予定】

 (1)管理運営

 ・地権者、地元住民、市民団体等を含めた市民、学校関係者、専門家、行政の連携による管理運営体制「大草谷津を育む会(仮称)」の構築を目指し、大草谷津田いきものの里の事業を推進していく。

 ・当面、谷津田や樹林の維持再生、生物モニタリング調査、自然体験学習等の活動は、ボランティアを主体として田んぼづくり、森づくり、生物環境調査等の事業部会を中心に運営していく。

 ・入口広場や自然観察路等における清掃・草刈・巡視等の基本的な維持管理は、地域住民や地権者による地元管理組合への業務委託により実施する。

 (2)順応的な管理による自然再生

 03~05年の3年間、専門家や市民と連携して自然環境モニタリング調査を実施し、その結果に基づき植生及び水環境の目標を立て、自然再生ゾーンの初期整備を行った。今後も市民参加によるモニタリング調査を実施することで、当初の整備・管理目標を点検・評価し、その結果を維持管理に反映させる順応的な管理手法により自然再生を行っていく。

 (3)人材育成

 ・谷津田や里山の維持・復元、生物モニタリング調査、自然体験指導等の活動を担う人材を育成するため、谷津田ボランティア育成講座「大草谷津学校(仮称)」を継続的に行っていく。

 ・育成した人材は、いきものの里だけでなく、谷津田の自然の保全に関する要綱に基づき指定した「谷津田等の保全区域」での保全活動に活用していく。



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