県総務部は2日、「県庁舎等再整備基本構想・基本計画検討会議」の2025年度第1回を、千葉市内のホテルプラザ菜の花4階「羽衣」で開催した。県は、県庁舎敷地内にある5棟の建物の整備手法について、本庁舎の「大規模改修」と、中庁舎・議会棟・南庁舎・南庁舎別館の「建て替え」を提示した。座長の柳澤要・千葉大学教授は、本庁舎の建て替えも含めた配置パターンを次回の検討会議で示すよう要請した。今後は、検討会議で議論を重ね、各建物の一体的かつ効率的な再整備のあり方や具体的な整備方針を示した基本構想・基本計画を26年度末をめどに策定する。
整備手法に関しては、定性面と定量面から検討を実施。ライフサイクルコストについて、本庁舎と南庁舎は改修と建て替えが「ほぼ同等」、中庁舎は「建て替えが優位」、議会棟は「建て替えがやや優位」とした。
南庁舎は、比較的新しいことなどから、大規模改修とする可能性もある。一方で、南庁舎別館は、著しく劣化が進んでいるため、建て替えを前提として検討を進めている。
検討会議は、柳澤座長のほか、林立也・千葉大学准教授、指田朝久・東京海上ディーアール主幹研究員、磯野綾・千葉工業大学助教で構成。
今回の議題は、現状と課題、再整備の方向性、県庁舎などのあり方について。
課題などとして▽本庁舎=内外装や設備の劣化、浸水の可能性(主要な機械室が地下)、執務室の狭あい化▽中庁舎=内外装・設備・躯体の劣化、浸水の可能性(主要な機械室が地下)、執務室の狭あい化、レイアウト変更が困難、旧耐震▽議会棟=内外装・設備・躯体の劣化、各所の漏水、浸水の可能性(主要な機械室が地下)、レイアウト変更が困難、旧耐震▽南庁舎=一部の漏水、浸水の可能性(主要な機械室が地下)、執務室の狭あい化、レイアウト変更が困難、旧耐震▽南庁舎別館=内外装が著しく劣化、執務室として利用困難、旧耐震――を挙げた。
そのほか共通して、高い環境性能や多様性への対応、複数の建物に分散した庁舎機能、不十分なセキュリティ、外観の統一性など都市景観への配慮といった課題を抱えている。
県庁舎などに備えるべき機能として「日常的な機能確保」「非常時の業務継続性」「将来を見据えた対応」を提示。
また、再整備で目指す県庁舎のあるべき姿として「質の高い行政サービスを提供し続ける機能的な庁舎」「誰にでもわかりやすく、利用しやすい庁舎」「県民の安全・安心を支える強靭な庁舎」「健全な財政運営を支える経済性・可変性に優れた庁舎」「環境負荷の低減に配慮した脱炭素型の庁舎」「水辺や緑と調和し、県行政のシンボルとなる庁舎」を挙げた。
指田委員は「本庁舎は、災害時においても業務継続性のある建物として建てられたが、設備がどうなるかは分からない。リスクを回避するためには建て替えたほうが良い」との考え方を示したほか、「本庁舎だけを残すと、ほかの棟と建て替えのサイクルがずれるため、長期でどのように考えるかが分かれ目。再整備に当たっては『次の建て替え』も考慮する必要がある」と提言した。
林委員は、環境性能などについて「高層の建物でZEB Readyを満足することは困難。また、木質化はコストや県産材の安定供給が課題となる」と話した。指田委員は「防災やセキュリティの面からは5階建て以下が望ましい」と述べた。
磯野委員は配置などに関し、千葉都市モノレールからの景観や、県庁敷地に隣接する羽衣公園および都川の有効活用に言及した。
今後の会議において、再整備の基本理念・整備概要、基本構想・基本計画の中間案、必要な機能・規模(検討の深度化)、事業手法などの検討、基本構想・基本計画(素案)、基本構想・計画の順に議論を重ねる予定。
11月中旬に開催予定の第2回では、今回寄せられた意見などを踏まえ、庁舎の配置パターンなどを示す。柳澤座長は、4棟建て替えだけでなく、本庁舎を含む全5棟を建て替える場合の配置パターンも提示するよう求めた。