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千葉県佐倉市

佐倉市水道事業実施5カ年計画を策定<3>

2006/04/19 日刊建設タイムズ

 【事業計画】

 佐倉市水道事業では03年、概ね10年間に必要な施設整備改修計画を示した「佐倉市水道事業基本計画」を策定した。また佐倉市に於いては水道事業も含めた形で、行財政運営方針・集中改革プラン策定が進められている。これに併せて、財源確保を図りながら計画的に事業を進めるため06年度から22年度までの5カ年実施計画を策定した。

▽将来需要予測=年間総配水量は99年度をピークに減少傾向にある。市の人口推計では今後5年間若干の増加を見込んでいることから、給水人口も僅かではあるが、増えていくものと思われる。しかしながら大幅な収益増加に結びつくものではなく収益としては横ばいで推移するものと考える。配水量が伸びないことから、印旛郡市広域市町村圏事務組合用水供給事業からの受水も、暫定水源を引き続き利用することを前提にすれば、日量最大1万8000立方m程度でまかなえるものと思われる。

▽財政計画=<1>収益的収入及び支出:水需要の延びが大きく望めない状況から、水道料金収入の増加も見込めない。しかしながら、人件費の削減や、受水量を少なく抑えたこと、企業債償還が進んだことによる支払利息の低下により、中期的には毎年3億円程度の当年度純利益を見込んでいる。このように当面は比較的良好な収支状況で推移すると見られるが、収入の約1割が不確定な加入負担金であることや、昨今の原油高の影響等、建設改良が進むことによる減価償却費が支出に大きく影響することも考えられる。なお策定期間中に見込んでいる毎年3億円余りの当年度純利益は企業債償還の財源とするため全額減債積立金に積み立てる<2>資本的収入及び支出:石綿セメント管等老朽化した配水管のダクタイル鋳鉄管への布設替えの推進、南部・志津・上座浄水場の大規模改修工事等多額の支出を見込んでいる。基本的には自己資金によって進めるものとするが、5年間で総額100億円を超える事業計画であるため企業債も必要最低限発行し計画的に事業を進める。04年度末現在、企業債残高は34億9400万円となっている。このうち21億円あまりが82-85年に発行した利率7%台の企業債であり、これらの償還が10年にピークを迎えるため、償還額は年々増加していく。しかしながら本計画による企業債発行について、当初5年間の元金償還が据置となり、また11年度以降元金償還額は急速に減少していくため企業債発行による経営への影響は少ないものと考える。一方で06年度から企業債は県知事の許可制から協議制へと移行し資金調達手段の多様化が図られる。また地方分権の推進の立場からは自主性・自己責任の強化が求められている。今後は安定的かつ有利な資金調達を確保する取り組みを強化していく。

▽主要施策=<1>原水・浄水施設:95-00年度にかけて整備した遠方監視制御システムにより水源井の効率的な運用が可能となった。また99年-04年度に進めてきた水源井更生工事により取水能力の向上を図った。これらにより水源井の効率的な運用が可能となり、印旛郡市広域市町村圏事務組合用水供給事業からの受水は、10年度までは日量最大1万8000t程度とし、受水費による経費の増加を極力抑えていく。各浄水場の設備が20年余りを経過し更新の時期を迎えている。設備の老朽化は機能低下及び不具合の発生も見られ、重大災害が懸念される。また耐用年数の短い電気設備等は補修部品の確保も難しい状況となっている。このことから06年度から建設改良事業として改修に着手する<2>配水・給水施設:水道施設管理情報システムの整備充実を図り維持管理の効率化を進める。漏水事故は老朽管更新事業が進んだ結果減少傾向にあるが、宅内漏水については増加傾向にある。これらについては業務委託により対応しているが、コスト比較やサービス水準の検討を行いながら、より良い委託形態を検討していく。また02年度から5カ年計画で進めてきた八幡台地区鉛給水管の改修事業は計画通り06年度に完了する<3>料金徴収業務:水道メーター検針から水道料金収納、転居時の受付・開閉栓・精算業務まで一括業務委託をしている。今後もサービス水準の維持向上に努めながら、競争原理が機能するよう委託先の定期的な見直しを行うとともに、コスト比較やサービス水準の検討を行いながら、より幅広い委託を検討していく。水道料金収納についてはこれまで金融機関もしくは委託先営業所のみに限られていたが、利用者の利便性向上のためコンビニエンスストアでの収納を検討していく。またクレジットカードやインターネット等利用者にとってより便利な支払い方法の研究を進める<4>付帯事業:付帯事業として、浄水場跡地を利用し佐倉市大蛇町地区に一般市民向けの有料駐車場を設置した。これにより年間150万円あまりの収益をあげている。今後も積極的に未利用資産の有効利用を図り収益の確保を図る。また佐倉のおいしい水を広く市民にPRするとともに一般飲用、災害備蓄用として地下水源の原水をペットボトル化することを検討する。さらに収益増加に資するため一般販売も併せて検討する<5>建設改良事業:石綿セメント管等老朽管を耐震性に優れたダクタイル鋳鉄管への布設替えを進めていく。石綿セメント管更新については95年度から市一般会計からの出資を受けて進めてきた。04年度末残延長が約43km余り、総延長に占める割合は約6%となっている。毎年約6-8kmの更新を計画的に進め、11年度完了を目標に進めていく。06年度からの事業費は約40億円を見込んでいる。また、前述したように83-85年に整備した浄水場設備が20年を経過し老朽化が進んでいる。志津、南部、上座各浄水場の配水施設に係る受変電、運転操作、監視、自家発電、薬注、配水ポンプの各設備を06年度から4カ年計画で更新していく。事業費は総額40億円を見込んでいる。

▽未整備地域解消問題=佐倉市における水道の普及率は95%を超えるまでになっている。今後さらに普及を進めていくためには、多額の資金を要することから水道事業単独で進めていくのは困難であり、市の支援(市一般会計の負担))が必要不可欠となりる。また地域住民と連携して各地域の実情に応じたきめ細かな検討を加えていく必要がある。

▽地域水道ビジョンの策定=04年6月1日、厚生労働省から水道ビジョンが発表した。21世紀中頃を見通した中で概ね10年間で取り組む目標、解決すべき諸課題についての対応が掲げられている。05年10月17日には、この提言を受け各事業体に対して地域水道ビジョンを策定するよう通知した。水道ビジョンに網羅した諸課題について、それぞれの地域・事業体の実情に応じて適切に対処すること、需要者のニーズに対応した信頼性の高い水道を構築し次世代に向けて継承していく事が求められている。これらをふまえ、将来にわたり安全・安心な水を安定して提供可能な水道サービスの充実を図るため地域水道ビジョンの策定に取り組む。



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