【佐倉市水道事業の概況】
佐倉市水道事業の前身は、昭和初期に旧佐倉町を中心に営まれた私営水道でした。54年3月、町村合併により佐倉市が誕生、公営水道設置の要望が高くなったことから56年3月、佐倉市水道事業の認可申請を行い同年7月に認可を受け、同年11月1日それまで30年間にわたり旧佐倉町住民に生活用水を供給してきた私営水道を買収し佐倉市水道事業が発足、給水を開始した。74年5月、財団法人佐倉市振興協会が経営していた佐倉市根郷簡易水道を統合し佐倉市の市街化区域全域が給水区域となった。また高度経済成長による人口急増に対応するため大規模な拡張事業を相次いで実施、整備を進めてきた。一方、千葉県では地盤沈下対策として地下水採取規制が実施した。そこで85年からは、水源をこれまでの地下水に加えて、利根川水系を水源とする印旛郡市広域市町村圏事務組合水道用水供給事業からの受水を開始、需要の増加に対応してきた。87年には第7次拡張事業の変更認可を受け市内全域を給水区域として整備することとなった。今日では最も重要なライフラインの一つとして、市民の日常生活や諸活動全体を支える欠くことの出来ない存在となっている。04年度末現在、給水人口16万4393人で普及率95・5%。年間総配水量は1836万7034立方m、有収率96・9%、水道料金収入33億2767万8481円、導水管・送水管・配水管総延長は70万7367m。佐倉市水道事業は3課3浄水場・水質検査室で水道事業管理者以下職員40名で運営している。一方で、水道事業をとりまく社会情勢は、バブル経済破綻後の状況下るる厳しさを増し、震災対策、料金収入の伸び悩み、複雑多様化する水質問題に対応するための水質管理体制の強化、集中的に建設した施設の更新期の到来等、多様な課題に直面している。佐倉市水道事業に於いても水需要は低迷し99年度をピークに配水量は減少している。水道料金収入は01年に料金改定を行ったため増加したものの以降は横ばいから減少傾向となっている。これらは大口需要の減少、節水意識の浸透、高性能な節水の機器普及、総人口の減少、高齢化の進行等によるものと思われ、今後も料金収入の増加は望めない状況となっている。さらに数年前から大口利用者がコスト削減を理由に地下水を利用した専用水道を設置するという動きもある。全国的に拡大の傾向にあり、これらは料金収入に影響を及ぼすだけでなく、既存の水道施設の維持管理や環境保全の面でも大きな問題を含んでいるものと考る。施設整備については、石綿セメント管等老朽化した配水管の布設替え、健康に悪影響を及ぼすおそれのある鉛給水管の布設替え、耐用年数を経過した浄水場設備の更新等の事業が多くある。これら施設の大規模な更新には多額の資金を要する。しかしながら前述のように水需要が低迷し収益が減少するなかで継続的に事業を進めて行くためには長期的な視点にたって将来計画を策定することが重要な課題となっている。
【事業運営の基本方針】
98年1月、規制緩和、地方分権、財政構造改革の推進という社会状況の中、当時の自治省から「地方公営企業の経営基盤の強化について」という地方公営企業の総点検を求める通知が出された。さらに02年4月にはこれを具体的にした「地方公営企業の総点検について」が総務省から通知され、地方公営企業の経営の総点検、サービス供給の在り方の再検討を行い、民間的経営手法の積極的な導入、計画性・透明性の高い企業経営の推進を進めるとともに事業のより一層の自立性の強化と経営の活性化を図るよう提起した。また05年3月29日には「地方公共団体における行政改革の推進のためのあらたな指針」(以下、指針と言う)が出され、地方公共団体に於いては集中改革プランを策定し、地方公営企業については経営健全化に取り組むこととした。佐倉市水道事業では、これらの通知以前から検針・水道料金徴収業務、漏水対策業務、浄水場管理業務など多くの部門で業務委託を行い経費縮減を図ってきた。また人員削減や一般競争入札の実施等、水道事業体の中では経営改善に進んだ取り組みをしてきた。こうした状況の中で、さらに中長期的な施設整備・更新の財源確保を図るため、一層の経営努力を行った上で、受益者の理解のもと、事業展開を進めて行くこととする。
▽サービス供給の在り方と再検討=
指針では、地方公営企業が供給しているサービス自体の必要性について民間への譲渡も含めて再検討するよう提起している。地方公営企業の中では、交通、ガス、病院事業等が民営化あるいは民間企業への売却、地方独立行政法人への移行等の例が見られるが水道事業では例がない。水道法上、水道事業は原則として市町村が経営するものとされていること、維持管理に多額の費用を要すること、中小規模の事業体が多いことが理由にあげられる。佐倉市水道事業に於いても地方公営企業の経営形態が望ましいものと考える。しかしながら事業の公共性及び一定のサービス水準の確保を前提としつつ、経営の自立性を高め、経営の効率化、活性化を図る手法の導入を検討する。
▽民間委託・経営基盤の強化の推進=民間委託については、経営の効率化を進めるに当たっての有力な手段の一つであり、その効果も大きいものである。佐倉市水道事業では、前述したとおり業務委託化は他の水道事業体に比べて進んでいるが、01年の水道法改正により、水道事業の包括的第三者委託が可能となった。04年には地方独立行政法人法が施行され、また地方自治法改正により指定管理者制度が新たに設けられ、民間的経営手法の促進が促されている。今後もさらに、競争原理が機能するよう委託先の定期的な見直しを行うとともに、コスト比較やサービス水準の検討を行いながら、より幅広い委託を検討・実施し経営の効率化、経営基盤の強化に努める。