県は建設工事等における低入札価格調査制度の見直し案を明らかにした。算定方法は入札者が5社以上の場合、その平均価格から「標準偏差×定数」を減算した価格を調査基準価格、失格基準価格とする。調査基準価格は応札額の平均値-0.5σ、失格基準価格は応札額平均値-1.5σとなる。制度改訂は2026年4月を目指す。なお、今回見直しの対象となるのは建設工事のみ。
見直し案は11日に開かれた25年度第2回県契約審議会で示された。定数の設定については、調査基準価格は0.5、失格基準価格は1.5が妥当と判断。また、調査基準価格、失格基準価格の下限値を引き上げ、上限値は設定しないこと、算定対象の入札者が5社未満の場合は、5社以上の場合の下限値を調査基準価格、失格基準価格とする方針。なお、受注希望型、総合評価落札方式ともに同じ算定方法の適用を検討する。
総合評価落札方式においては制度の趣旨を踏まえ、価格最高点を狙った過度な競争を抑制するため、価格点の算定方法を見直す。現行制度では平均価格が価格点の最高点となるため、そこに応札が集中する傾向があるとし、現行の調査基準価格から新たに算定する調査基準価格までの間の入札者を価格最高点とする。これにより、入札価格にばらつきが生まれ、過度な競争の抑制が図られることを期待する。
県は今後について、低入札価格調査制度を見直し、入札行動にも変化が見られることが想定されるため、制度見直し後も入札状況を注視し適正な制度となるよう引き続き分析を行い、必要が生じた場合は定数を含めた算定方法の見直しを行うと説明した。見直し時期については、システム改修等の進捗状況によるものの、26年4月の改訂を目指すとした。
同審議会の委員を務める県建設業協会の木下修会長は「新しい制度は今まで出てきた低入札調査制度の矛盾点が相当改善されると思う。価格最高点が1社ではなくなるため、過度に低い入札価格を目指す会社も減るという効果もあると思う。どのような入札構造になるか分からないが、施行する中で、平均落札率が下がるようであれば、定数の見直しをお願いする」と述べた。県は定数の設定について「定数の刻みは分かりやすいように0.5刻みとした。0.5、0.6、0.4がいいのか、もっと細かくしたほうがいいのかは、応札状況を見ながら当てはめてどれが最適なのかを検討していく」と話した。
低入札価格調査制度の見直しを巡っては、調査基準価格の上限値(工事は予定価格の94.5%、業務は同90%)付近に入札価格が集中し、そこからわずかに下回った価格で調査対象となる事例が発生していることや、工事では調査により失格となった事例がなく、制度の形骸化が指摘されていることを踏まえたもの。
24年度第4回の県契約審議会で見直し方針を説明し、大筋で合意を得ていた。審議会時の見直し方針は①県のこれまでの取組方針を踏まえ、「変動制」を維持②算定対象の入札者が5者以上の場合は、その平均価格から「標準偏差×定数」を減算した価格を調査基準価格、失格基準価格とする③調査基準価格、失格基準価格の下限値を引き上げるとともに、上限値は設定しない④算定対象の入札者が5者未満の場合は、5者以上の場合の下限値を調査基準価格、失格基準価格とする⑤総合評価落札方式における価格最高点に幅を広げる―としている。
今回の見直し対象を建設工事のみとしたのは、業務委託は関係団体との意見交換の結果から、さらに検討が必要と判断したため。