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栃木県那須烏山市

那須烏山市重点ため池、防災工事5カ所26年度着手、猿久保、大和久、西、長田、浅沢溜

2025/09/18 栃木建設新聞

 那須烏山市は、防災重点農業用ため池の緊急防災工事を計画。該当する市内18カ所のため池のうち南那須地区の猿久保溜池(小塙)、大和久の溜(南大和久)、西溜池(福岡)、長田溜池(藤田)、浅沢溜池(藤田)の5カ所に着手する。2025年度下期に設計を委託。26年度に工事を発注し完了させる予定。主に堤体補強や洪水吐き施設の改修を実施する。5カ所の総事業費は3億2730万円。堤体の地盤改良を伴う猿久保溜池に1億7230万円を見込んでいる。残る13カ所の防災工事については廃止を含め対応を検討していく。

 25年度事業費は3949万円(24年度補正予算含む)。重点ため池の対策工事は下流にJR線、県道などがある箇所や工業団地の入り口にある池などを優先。5カ所の市営施行が9月議会で承認された。

 5カ所はいずれも江戸時代の築造。20年度に防災重点農業用ため池の指定を受け、20年度から21年度に劣化状況調査と豪雨・地震耐性調査を実施。耐震性の低下や堤体高不足、洪水吐きの処理能力不足といった課題が確認された。

 工事は各ため池の課題に応じた対策を実施。堤体を補強し機能を回復することで決壊を未然に防ぎ、農業経営の安定と地域住民の暮らしの安全を確保する。事業費の補助率は国55%、県25%で市の負担は20%。

 猿久保溜池は堤高4m、堤頂長60m、総貯水量1万8000立方m。管理者は荒川南部土地改良区。堤体法面の変形や漏水が進行している。調査では耐震性の低下や堤体高不足に加え、液状化の可能性があることが判明。洪水吐きや管理橋の老朽化も確認された。

 計画では耐震性確保と液状化対策として堤体を全面的に改修。上流に大型土嚢で仮締め切り工を実施。堤体は地盤を改良して再構築する工法を検討。堤体上流側は遮水シートを張り平板ブロックを設置する。

 堤体の余裕高を確保するため、洪水吐きの敷高を下げ側水路型で改修。取水塔や底樋施設も改修する予定。

 工事費1億6200万円、測量試験費1030万円を試算。各箇所の工法や事業費は設計で決定していく。

 大和久の溜は堤高5m、堤頂長50m、総貯水量5000立方m。管理者は南大和久自治会。洪水吐きの処理能力や堤体高、堤体の耐震性が不足している。

 堤体耐震補強は上流側に押さえ盛り土を実施。下流側は遮水シートを設置して浸潤線を下げ耐震性を改善する。

 竪樋施設による補修工事では取水栓・切欠きを設置。洪水吐きは断面を拡大し正面越流型で改修。堤体余裕高は常時満水位を下げ確保する。工事費4280万円、測量試験費990万円を見込んでいる。

 西溜池は堤高2m、堤頂長50m、総貯水量2000立方m。協同組合が管理している。洪水吐き処理能力、堤体高の不足、堤体断面の変形、底樋管出口の洗掘が確認されている。堤体下流法面の樹木が安定に影響する危険性もある。

 堤体の余裕高を確保するため上部に盛り土し、上流側に腹付け盛り土を実施。伐採抜根を行い堤体土の性状に近い土で締め固め埋め戻す。既設の取水施設は取り壊し、取水施設兼洪水吐きを新設。正面越流型とする。工事費2410万円、測量試験費820万円。

 長田溜池は堤高2・5m、堤頂長25m、総貯水量1000立方m。管理者は南那須土地改良区。洪水吐きの処理能力や堤体高が不足している。

 洪水吐きは側水路型で取水施設と一体的に整備。ゲート設備で管理する。洗掘防止のため部分的に法面に張りブロックを設置する。工事費3180万円、測量試験費440万円。

 浅沢溜池は堤高2m、堤頂長90m、総貯水量3000立方m。管理者は浅沢溜下組合。洪水吐きの処理能力と堤体高が不足。堤体は断面が変形し、下流法面に樹木がある。

 伐採抜根を行って堤体法面を復旧。性状が近い土で締め固め埋め戻す。洪水吐きは断面を拡大し正面越流型で改修。呑口高を下げ余裕高を確保する計画。工事費は2940万円、測量試験費は440万円を見込んでいる。

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