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山梨県笛吹市

青楓美術館移転へ

2025/09/30 山梨建設新聞

 笛吹市は青楓美術館(同市一宮町)を移転する方針を固めた。同町内の既存施設を改修し整備する計画。2026年度当初予算案に関連経費を盛り込む方向で調整する。同美術館を巡っては、春日居郷土館へ集約するとの市の方針に対し市民から存続を求める声が上がり、施設のあり方を再検討していた。

 山下政樹市長は9月市議会で、青楓美術館について「一宮町内に市立美術館の機能を備えた施設として整備し、青楓美術館を核に市にゆかりのある美術作品も併せて展示を行う施設を目指す」と、移転した上で存続させる考えを示した。

 関係者によると、施設名は現在と同じ「青楓美術館」とする案が有力。美術品の展示に適した空調や照明など、設備類も含め改修する方向で検討している。26年度当初予算案に関連経費を盛り込む方向で、早期の事業化を目指すという。青楓美術館整備後、八代郷土館(大森銀行)、八代郷土館(旧石原家住宅)、春日居郷土館(小川正子記念館)などのその他文化施設についても、順次改修する見込みだ。

 青楓美術館はRC造2階建てで、延べ床面積は159㎡。1974年建設と築51年が経過している。市の公共施設個別施設計画によると、防犯対策として、窓を塞ぎ鉄格子を付けているため避難経路が確保されておらず、消防法上不適格な建物との指摘を受けた。収蔵スペースは冬場壁際が結露するといい、良好な美術品保管には大規模な改修が必要とされている。

 また手狭なため今後資料などの寄贈を受けた場合、保管場所が不足するとの懸念もある。アクセス道路の幅は狭く、観光バスなどの大型車は乗り入れが困難という。

 こうした背景から市は春日居郷土館へ機能を集約する方針だった。だが地元から反対の声があったため、市は「笛吹市文化施設の在り方に関する検討委員会」を設置。同美術館を含む市内全文化施設の方向性について、有識者らの意見を聞くことにした。

 同委は青楓美術館について「多くの方に美術品に触れ親しんでもらえる市立美術館を目指し、津田青楓の作品を核とした展示を行うことが望ましい」と意見集約し、25年3月26日に市に報告書を提出。それを踏まえ市は施設の存続を決めた。

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