藤代健吾・印西市長が、就任1周年を機に日刊建設タイムズの単独インタビューに応じた。データセンターは市にとって重要な産業であるとした上で、駅周辺や生活圏に隣接したエリアにおける建設にはルールが必要との見解を示した。今後は、用途の制限などに強制力があり、最も即効性の高い「地区計画の見直し」に向けて変更作業を進めている。印旛中央地区土地区画整理事業に関しては、事業費および事業者選定における透明性確保の重要性を強調。年度内に、企業への個別サウンディング調査を実施し、情報取集、意見交換を進める。
――市長就任から1年を振り返って。
藤代 7月末に、市長選で掲げた公約について、具体的な実施内容とスケジュールをロードマップとしてまとめた。130を超える公約がある中で、市職員には本当に尽力いただいた。まずは市職員への感謝が1番にある。また、個別の政策の具体化や、新しい政策を検討する上で、多くの市民の皆さんと対話し、何に困っているのか、どういった思いを持っているのか、より深く理解することができた。話を伺う機会をいただいたことに感謝申し上げたい。
――印西市への想いは。
藤代 千葉ニュータウン中央地区ができて41年、市制が施行されて来年で30年となる。成熟のタイミングにあり、次の30年、50年、100年先を見据えたまちづくりを進める転換期を迎えている。任期の4年間で、次の時代に向けたまちづくりの姿を示し、基盤となるルール作り、市役所作りを進めていくことが私の仕事だと考えている。印西市は解決すべき課題はあるものの、可能性を秘めた都市。千葉ニュータウンについては、成田国際空港の機能強化に伴い、経済効果の取り込みが必要。産業面の可能性も広がるので、チャンスをしっかり捉えていきたい。また、自然が多いことも市の特性の一つ。一極集中型ではなく、各地域の特性を最大限に生かしながら、都市と自然が引き続き調和していく「多極・循環型」のまちづくりを進めていくことが、市にとって重要。建設という観点では、用地の確保が今後の課題。千葉ニュータウン中央駅や印西牧の原駅周辺では住宅建設が進み、残された住宅用地が限られている。産業用地についても、相当程度場所が埋まってきている。用地をどのように確保していくかは、今後の課題として検討を進める。
――データセンター整備の今後の方向性は。
藤代 駅周辺や生活圏に隣接したエリアなどのデータセンター整備に関しては、新たなゾーニングとルールが必要と考えている。地区計画の改定に向け、エリア内の事業者の方々と順番に対話する場をいただいている。7月下旬には、事業者や土地所有者に集まっていただき、勉強会を開催した。状況が整い次第、具体的な改定のプロセスに入り、早期の地区計画の見直しを目指したい。新たなルールづくりに当たっては、企画立案段階から市民参加条例に基づき、ちば電子申請サービスで意見を募集し、8月20日時点で204件の意見が寄せられている。そのうちデータセンターに関する意見として約94%が駅周辺などでのデータセンター整備に否定的だった。今後は、地区計画の見直しなどの進捗を踏まえ、適切なタイミングで市民の皆さまに伝える場を設けていきたい。
(中見出し2段)DC産業は重要産業/建設サポートの方針
印西市としても、データセンター産業は非常に重要。多くの固定資産税、消費税を納めていただいている。関連する雇用もあり、地域の経済的波及効果は非常に大きいものがある。これからも建設をサポートするという方針は変わらない。
――印旛中央地区土地区画整理事業については。
藤代 印旛中央地区土地区画整理事業の事業化に向けては、11月頃に実施される国土交通省主催の「25年度官民連携事業の推進のための地方ブロックプラットフォームにおけるサウンディング」に参加し、広く事業者を募集する。その後、12月から26年3月にかけて市主催の個別サウンディングを実施し、企業と個別に意見交換や情報収集を行う予定となっている。
(中見出し2段)事業費等の透明/性確保は大前提
印旛中央地区については、地元地権者による発起人会と市で、組合方式の土地区画整理事業による開発を目指してきた。事業費の精査や事業者選定などの公平性および透明性の確保を要望したところ、3月に発起人会から「要望は市主導による事業への転換を図り、6年間の準備行為を白紙にするもの」と主張があり、3月に発起人会を解散する旨の回答があった。同事業については、市が土地の約4割を所有していること、インフラ整備などに補助金の支出を予定している観点から、公共事業に近い事業であると認識している。物価も高騰している中で、事業費や事業者選定の透明性を確保し、公正なプロセスで進めることは大前提。
――そのほかの建設事業について。
藤代 クリーンセンターについて、施設本体は、28年4月のオープンに向けて整備を進めている。掘り下げ工事が完了し、現在は基礎工事を進めており、10月から躯体の工事に着手する予定。周辺のアクセス道路や、関連するインフラの整備については、印西地区環境整備事業組合や各関係者と連携を図りながら、同時並行で進める。また、地域振興施設として廃熱などを利用した温浴施設の建設を予定している。市内の入浴施設が限られていることもあり、地元からのニーズも非常に高い。25年度下半期に基本設計、実施設計に入っていく予定で、こちらも28年の4月開業を目指して調整を進める。
コスモス道路については、土地の取得は9割ほど完了した一方で、いくつか地権者から了解をいただいてないところが残っている。県の事業だが、用地の取得に向けては、積極的に市も前に出て、地権者の方々とコミュニケーションを図っている。期限を設け、ステップを踏んでいきたい。
――地域建設業への思いは。
藤代 地域経済の中心である建設業が盛り上がっていくことは、市の経済循環、まちづくりにおいても非常に重要。地元の事業者の方々には、市内事業に積極的に関わっていただきたいと考えている。地元企業優先の入札制度改革として、25年度から総合評価方式一般競争入札で、市内企業を活用した際に加点する制度を施行している。入札制度に関しては、引き続き市内企業活用に向けて検討を重ねていく。普通建設事業費の24年度決算ベースは68億円で、5年前と比較して1・6倍近くまで上がっている。小・中学校の老朽化、公共施設の補修・改修、道路など新設・維持・補修などの事業も出てくるので、地元事業者の方々に活躍していただきたい。
――趣味について。
藤代 時間を見つけていろいろなまちを巡り、五感で感じ、市政の参考にしている。最近では、子育ての分野では千葉市のアフタースクールに、公民連携の分野では旭市のイオンタウンにある「おひさまテラス」に、観光振興の分野では佐倉市の印旛沼を中心にして開催された「沼フェス」に伺った。また、新鎌ヶ谷駅前の県有地活用、流山市のまちづくり、白井市のまちづくり条例などを勉強している。
【略歴】
ふじしろ・けんご
1984年、印西市山田生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。国際協力銀行、ボストン・コンサルティング・グループ、青山社中㈱執行役員を経て、2022年に印西市で弥治右衛門合同会社を創業。2024年7月21日執行の市長選挙で初当選を果たし、第5代市長となった。