第1回県立病院あり方検討有識者会議(委員長・小沼一郎県医師会長)は27日、県立病院が担うべき診療機能と役割を協議。今後5~10年以内に再整備が見込まれる宇都宮市のがんセンター(陽南4―9―13)と岡本台病院(下岡本町2162)について専門性を残しつつ、総合病院化し統合再編するのが望ましいとの意見を集約した。がんセンターは高齢患者の受け入れが増え、がん以外の糖尿病をはじめ併存症や身体合併症が増加しているほか、岡本台は災害拠点精神科病院の指定を検討している。
病院の建物は法定耐用年数が39年。がんセンターと岡本台病院は主な病棟が35年以上、古い建物では50年以上が経過し老朽化が進行。恒常的な修繕で適宜対応しているが、診療などへの影響も生じており、早急な建て替えなど抜本的な対策が必要な状況。
がんセンターは2025年度許可病床数が291、うち225床が稼働。職員数466人のうち医師62人が在職する。敷地面積は4万3084平方m、延べ床面積3万9278平方m。今年4月現在の築年数は本館39年、新館24年、管理棟54年、研究棟は49年が経過している。
設置目的はがん医療政策として求められる高度専門医療を提供。都道府県がん診療連携拠点病院。外来化学療法、がんゲノム医療、希少がん、婦人科がん緩和ケアなどが診療機能。
老朽化による不具合では、排水管の詰まりで広範囲で給排水機能が停止し使用可能な病床に制限が出ている。手術室前廊下で蒸気漏れが発生。修繕までの間、手術室への入室経路の変更が生じた。このほか、局地的な大雨で雨水が侵入。モーター劣化による排気ファンからの発煙や給湯管が破裂し一時的に給湯が停止した。
岡本台病院は許可病床221のうち165床が稼働。職員数179人のうち医師が19人。敷地面積7万521平方m、延べ床面積1万3820平方m。築年数は入院病棟35年、管理診療棟34年、作業治療棟58年、給食棟46年が経過。
設置目的は精神医療政策として求められる専門医療を提供。診療機能は精神科救急医療、医療観察法医療、依存症医療(アルコール・薬物・ギャンブル)。
有識者会議では本県に求められる災害拠点、感染症対応、救急医療について検討。災害拠点病院は大規模災害時に迅速で的確な医療提供体制の確保が必要。県内13カ所のうち県立3病院は役割を担っていない。
新型コロナウイルスに端を発し22年国は感染症法を改正。公立病院には感染症発生とまん延時に担うべき医療の提供を義務付けた。県立3病院は専門性が高く平時から感染症に対応できる医師や設備の確保が難しい。感染症を想定した外来・病棟の造りになっていない。
県立病院が所在する宇都宮医療圏では、済生会宇都宮病院、NHO栃木医療センター、宇都宮記念病院、JCHOうつのみや病院、NHO宇都宮病院の5カ所で救急搬送の約88%を対応している。
委員は医師の確保を含め救急医療を担う3次病院間の連携の重要性に言及。年末年始の医療人材が不足する時期は受け入れる順番を決めて対応すべきなどと述べ、他病院との役割分担と連携のあり方を前提に総合病院化の検討を進めるべきとした。
宇都宮構想区域について県は「推進区域」「モデル推進区域」を設定し国に提案。医療機能の分化と再編・統合を含む連携の取り組みを推進する。
今後は2040年の地域医療のあり方を見据え、26年度にも方針を反映した県地域医療構想の策定に着手。区域内の機能分化と連携強化に向け、公立や公的医療機関を再整備。老朽化した県立病院は機能の検討とともに再整備を実施する。
福田富一知事は「がんセンターと岡本台病院は老朽化が深刻で早急な再整備が必要。県立病院の再生を踏まえて良質な医療資源を提供すべく、診療科目と機能のあり方、県立病院の役割など再編の方向性を検討していただきたい」とあいさつした。
















