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渡良瀬川フォロー委 中橋の現計画継続を了承、貯留機能強化、境橋架け替え

2025/12/04 栃木建設新聞

 2025年度第1回利根川水系渡良瀬川河川整備計画フォーローアップ委員会(委員長・長尾昌朋足利大学教授)は3日、河川整備計画と24年7月に変更された河川整備基本方針に基づき治水安全度の達成に向け整備を加速化するなど4項目を確認。特定構造物改築事業の中橋架け替えは、事業費を103億円増額し210億円とする変更案を了承した。河川整備基本方針では流量増加に伴い矢場川との合流部と秋山川に新たな貯留・遊水機能の確保を位置づけ。桁高が不足する3橋梁のうち中橋に続き境橋の架け替えを47年度までに実施する。

 渡良瀬川河川整備計画の点検は17年12月の計画策定から4回目。点検結果では①河川整備計画に基づき環境に配慮しながら事業を実施し早期の治水安全度を達成②気候変動に伴う降雨量の増加を考慮した治水計画の見直しを検討③水災害リスクの増大化に備え流域全体での取り組みを推進④豊かな自然の再生と水辺空間を確保する整備の継続―4項目を確認した。

 24年度末の渡良瀬川の進ちょく率は堤防の整備22・8㎞のうち24%、河道掘削2・3㎞のうち26%。橋梁の架け替えは3橋で足利千代田線中橋が事業中。桐生岩舟線境橋(桐生川直轄区間)、足利太田線渡良瀬橋の順に架け替える見通し。浸透対策が14・9㎞のうち15%で、浸食対策は32・2㎞のうち16%の進ちょく。

 47年度までの概ね30年で実施する治水対策は、堤防未整備区間を築堤し流下能力の向上を図る。河道掘削は流下能力の低い箇所から優先して実施。渡良瀬川は堤防未整備区間と橋梁架け替えが必要な箇所の流下能力不足が著しい。浸透・浸食対策は堤防強化と河岸浸食に対する安全対策を行う。

 気候変動による降雨量の増加で利根川水系河川整備基本方針を変更。ダムなど既設調節施設や新たな貯留機能の整備で計画流量を見直す。

 渡良瀬川環境整備は26年度から2カ年で、緩傾斜堤防1930m、坂路7カ所、管理用通路900mを整備するほか、3万9700平方mの基盤整備を実施。

 今年度から始まったかわまちづくりでは、側帯1カ所、管理用通路1万100m、坂路4カ所を計画。事業期間は33年度まで。

 中橋の増額の内訳は工事費91億円、用地補償費12億円。工事費91億円のうち労務資材単価の高騰が53億円を占めた。事業が始まった21年度と比べ労務費は約1・2倍、土木資材単価は約1・5倍になった。

 設計条件の変更は31億円増加。橋梁を支える杭長の支持層を一段階深く見直したため、P1の杭長が10・5mを14・5m延長し25m。P2は9mから16m延長して25mとした。

 アーチ橋の移設は当初、油圧ジャッキによるスライド方式の採用を計画。アーチの受け点は移設工事に応じて変わるため、各工程の受け点に補強が必要なことが分かり、期間に2渇水期と全体の工期にも影響。架台の設置の必要性から出水に対する安全性も劣ると判断。大型クレーン2台による吊り上げ方式に変更し1渇水期で移設した。事業費は7億円増加した。

 用地補償費は補償額算定で資材高騰と補償物件の解体時にアスベストの含有が判明。12億円の増額となった。

 中橋架け替えの27年度までのスケジュールは、今年度渇水期から中橋の下部工と堤防のかさ上げ、跨線橋の上下部工に着手。26年度の渇水期には中橋の上部工と跨線橋JR直上部の架設に着手する見通し。取り付け道路は継続的に実施していく。

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