国土交通省が設置した中央建設業審議会(中建審、会長・大久保哲夫三井住友トラストグループ会長)の総会が2日に省内で開かれた。会では『労務費に関する基準』を審議し、了承された。審議会は同省に2日付けで勧告した。
会の冒頭、不動産・建設経済局の楠田幹人局長はあいさつで「建設業は担い手の長期的な減少、主要資材の高止まりといった危機にあるが、これまでの取引慣行を根本から改め、賃上げ環境整備や価格転嫁対策の徹底などを実現する絶好の機会とも言える」と述べ、適正な労務費を行き渡らせ、建設技能者に適切な賃金を支払う施策についての審議を求めた。
『労務費に関する基準』の審議では、建設業界の現状やワーキンググループでの議論などの背景を事務局が紹介。さらに労務費に関する基準の考え方、実効性確保について説明した。同基準は技能者の処遇改善に向けて設定。適正な労務費を賃金の原資とし、技能者に適正な賃金として支払われることを目指すもの。基準値は職種分野ごとに各団体との意見交換を経て決定する。
実効性確保としては、契約段階において労務費等の内訳を明示した見積書を作成。建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度を創設し、経営審査事項において加点する。著しく低い労務費の見積書については建設Gメンが調査を行う。適正な労務費・賃金支払いを当事者間でも確認できるようコミットメント制度を導入。技能者通報制度も行う。
会では日本建設業連合会の宮本洋一会長が「簡単に様相が変わるのは難しいと思うので、フォローアップを行って、より良い制度にしてほしい」とコメント。全国建設業協会の今井雅則会長は「人材投資、生産性向上に投資できるような環境整備を行ってほしい」。全国中小建設業協会の土志田領司前会長は「受注者間、元請下請間の商習慣が大きく変わることになる。国には地方公共団体への指導を強化してほしい」。建設産業専門団体連合会の岩田正吾会長は「基準により価格は高くなる。これで仕事がなくなることのないようにしてほしい」と意見を述べた。
中建審では建設工事標準請負契約約款の改正についても審議した。
改正内容は▽内訳書に材料費・労務費・安全衛生経費・建退共掛金を追加▽コミットメント条項を新設▽資材供給減少や資材価格高騰などの場合に契約変更の請求ができることを追加▽契約変更請求を行った際に相手方に協議を求めることができることを明確化▽請負代金変更について協議が整わなかったことで不利益な扱いを行わないことを明確化―など。
















