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千葉県酒々井町

産業誘致で発展目指す/空港拡張を機に歳入強化/金塚学・酒々井町長 就任インタビュー

2025/12/24 日刊建設タイムズ

 11月30日執行の酒々井町長選挙で初当選を果たした金塚学氏が、日刊建設タイムズの独占インタビューに応じた。町民サービスの維持と地域活性化の実現のために歳入面の強化が不可欠と考え、「成田空港『第2の開港プロジェクト』を生かした発展するまちづくり」を公約の「一丁目一番地」に掲げている。また、酒々井インターチェンジ周辺や鉄道駅周辺でのまちづくりや産業誘致に注力。酒々井ちびっこ天国の跡地利用においては、施設を解体し、新たな活用を図る。保育施設については、現状の2園を1園に統合することを検討している。


 ―酒々井町への印象と思いは。


 金塚 町制施行136年を迎え、「日本で一番古い町」として知られている。宿場町として栄え、町制施行時点で4000人ほどの住民がいた。町名は、孝行息子が汲んだ井戸の水が酒になったという「酒の井伝説」に由来する。きれいな水が湧き、300年続く酒蔵を有するほか、ヘイケボタルとゲンジボタルが見られる。受け継がれてきた歴史と文化、自然環境を守っていきたい。


 ―町長就任に当たっての豊富と展望は。


 金塚 10年にわたって町議会議員を務める間、財政面から事業の中止や縮小が増加するのを目の当たりにしてきた。通常であれば、安心・安全なまちづくりや福祉政策を公約の「一丁目一番地」に挙げると思うが、その実現に必要な費用を捻出できない状態となっているため、まずは成田国際空港の機能強化を契機として歳入面を強化する。住民サービスを維持しながら活性化を図り、「稼げる自治体」を目指したい。


 ―町と成田空港の関わりは。


 金塚 新東京国際空港として開港した1978年当時、多くの人が町に移り住み、大変なにぎわいだったという。その後は、羽田空港の拡張に伴い、浦安や市川、都内への転居が進んだと聞いている。2029年3月の成田空港第三滑走路の完成が予定されている中、改めて活性化に向けたまちづくりを進め、物流・産業拠点の形成を図るとともに、増加する空港職員の受け皿になれるよう努力する。


 ―まちづくりや産業誘致を加速するエリアについて。


 金塚 酒々井インターチェンジが「地域活性化インターチェンジ」として設置されたことから、物流業や新産業を呼び込みたい。また、町内には鉄道駅が4駅ある。京成酒々井駅とJR酒々井駅には住宅が張り付いており、それを生かしたまちづくりを進める。南酒々井駅と宗吾参道駅の周辺は開発の余地が残っている。宗吾参道駅周辺では、酒々井ちびっこ天国の跡地利用が課題となっている。


 ―開発事業の進め方は。


 金塚 財政が厳しい中、民間の投資や支援を受けながら進めていくことになるが、まずは地権者の意向を把握した上で、まちづくりの方向性を示していく。また、酒々井ちびっこ天国の跡地利用においては、施設を解体し、さら地にした上で、新たな活用を図る。近接する公津の杜における人口増加、宗吾参道駅や町内唯一の高等学校である東京学館高等学校との近接性も踏まえて方針を固め、京成電鉄など民間とも協力しながら進めていきたい。


 ―職住近接のまちづくりについて。


 金塚 新たな産業や企業の誘致などにより町内の雇用を創出し、働く場所と住む場所が近い環境づくりを進めていくことで、長く住んでもらえるまちづくりを実現したい。物流だけでなく、研究施設、組立工場、航空宇宙産業などの立地需要があると認識している。


 ―サウンディング型市場調査の手続きが進む酒々井総合公園の整備は。


 金塚 公約の1つに「子どもたちの成長を楽しみながら暮らせるまちづくり」を掲げている。酒々井総合公園の老朽化対応に併せ、例えば子育て世帯の方々や犬を飼っている方々がのびのびと遊べるスペースに再整備するなど、新たな利用を促進することにより具現化を図りたい。Park―PFIなど民間活力の導入も含めて検討していく。


 ―老朽化などが課題となっている教育施設について。


 金塚 個別施設計画に基づき、小中学校の施設整備を進めていく必要がある。建築費の高騰や改修に関する技術の進歩を踏まえ、改修や減築について調査研究しながら、方向性を探っていく。一方で、保育施設については、現状の2園を1園に統合することを検討している。


 ―中川調節池の整備について。


 金塚 県の交付金を受けて事業を進めているが、用地交渉の難航や大雨の増加も踏まえた計画変更の可能性もある。内水氾濫への対策としては、排水ポンプの設置なども行っており、町民が安心して安全に長く住み続けられる環境づくりに取り組む。


 ―地域の建設業への期待は。


 金塚 酒々井町建設業災害対策協力会と「大規模災害時応急工事の協力に関する業務協定」を結び、大雨だけでなく、大雪や土砂災害の際にも出動していただいている。緊急時や災害時に活動していただくためには、地元企業の育成を図り、「町内で経営していて良かった」と思ってもらえるような自治体運営に取り組むとともに、連携を強化しなければならない。


 ―趣味や習慣は。


 金塚 町議会議員時代には、日曜日になると街頭演説をしていた。町長就任後、回数は減ってしまっているが、時々は実施したい。町民の声を聞くため、タウンミーティングなどを何十回も行ってきたので、今後も続けたい。また、午前5時頃までに起床し、ラブラドール・レトリバーの「マロン」と散歩している。



〈略歴〉

 かねづか・まなぶ

 1974年、八千代市生まれ。明海大学大学院不動産学研究科修士課程修了。民間サルベージ(潜水調査)会社勤務、椎名一保・参議員議員(当時)秘書、松本尚・衆議院議員秘書、第40代町議会議長などを経て、11月30日執行の町長選挙で初当選し、第48代町長となった。

金塚学・酒々井町長

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