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【新春インタビュー】金子恭之国土交通相/新しい時代の建設業を作る

2026/01/05 本社配信

 金子恭之国土交通相は建設専門紙を対象とした2026年の新春インタビューで、インフラ全般の老朽化対策や国土強靱化初年度事業の早期執行に取り組む考えを示した。また第三次・担い手3法を踏まえ、技能者を大切にする企業が評価される「新しい時代の建設業」を作ると述べた。人材確保・育成についても関係機関とも連携して取り組むこととしている。

 ―下水道劣化を起因とする道路陥没事故から約1年。今後のインフラ管理をどう進めるか。

 金子国交相 八潮市の事故現場は、私自身も昨年6月に視察しており、万が一事故が起きた際の影響の大きさを目の当たりにしました。

 昨年12月1日にまとめられた有識者委員会の提言では、安全性確保を何よりも最優先するという基本スタンスのもと、下水道管路の点検・調査の重点化や、重要管路の複線化、下水道管の多くが道路の地下空間にあることも踏まえた下水道管理者と道路管理者との連携の重要性などが示されました。

 この提言も踏まえ、事故発生時に重大な影響を及ぼす可能性がある管路の更新や、災害・事故後に迅速に機能を確保することが容易ではない管路の複線化に対する補助制度の拡充を、25年度補正予算や26年度予算案に盛り込んでいます。

 私自身も12月20日に、東京都の芝浦水再生センターにて管路更生工法や下水道管路の複線化事業、下水道事業者と道路管理者の連携による空洞探査に関する先進事例を視察し、こうした取り組みが全国で進められるように法令を含む諸制度の見直しの検討を加速化してまいります。

 また水道についても昨年11月の沖縄県での大規模な断水なども踏まえ、重要な管路の更新や複線化を進めてまいります。

 インフラ全般に目を向けても、わが国のインフラは高度経済成長期以降に集中整備され、現在、老朽施設の割合が加速度的に高まる中、その的確な維持管理や更新の重要性が増加しております。

 このため定期的な点検やインフラの適切な管理・更新により、不具合が生じる前に対処する「予防保全型メンテナンス」の考えで取り組むこと、また対策の優先順位をつけ、ドローンなどの新技術の導入などにより効率化を図ります。あわせて自治体の人員不足に対応するための「地域インフラ群再生戦略マネジメント」いわゆる「群マネ」の取り組みも推進してまいります。

 「八潮のような事故を二度と起こしてはならない」という強い決意のもと、強靱で持続可能な下水道の構築、さらにはインフラ全般の効率的・効果的な老朽化対策に向け、必要かつ十分な公共事業予算の確保に努めてまいります。


 ―国土強靱化実施中期計画の初年度事業執行に向けた意気込みを。

 金子国交相 国土強靱化の取り組みは、自然災害から国民の生命、財産、暮らしを守るとともに、ライフラインの強靱化を通じて力強い経済成長を実現するものであり、危機管理投資の大きな柱でもあります。

 昨今、自然災害が激甚化・頻発化しており、また老朽化したインフラの整備や保全が喫緊の課題となる中、昨年6月には「第1次国土強靱化実施中期計画」が閣議決定されました。その事業規模については「5か年加速化対策」を上回る水準として「今後5年間でおおむね20兆円強程度を目途」とすることが示されております。

 昨年末に成立した25年度補正予算における第1次国土強靱化実施中期計画関連の公共事業関係費は、国土交通省において前年度を大きく上回る1兆2346億円を計上しています。

 国民の安全・安心を守る国土強靱化の取り組みは「待ったなし」の課題です。国交省としても、この補正予算からはじまる第1次国土強靱化実施中期計画の目標を達成できるよう、早期執行に努めてまいります。


 ―改正建設業法等が全面施行となった。受発注者に対する期待は。

 金子国交相 建設業は社会資本の整備・管理に加え、災害時には現場で応急復旧に対応するなど、地域の守り手として国民の生命・財産・暮らしを守り、地域の雇用確保や経済成長を支えており、これからも「なくてはならない」重要な産業です。

 一方、建設業は「人で支えられ、成り立っている産業」ですが、近年技能者の高齢化が急速に進んでおり、賃上げなどの処遇改善や働き方改革を進め、担い手の確保に取り組むことが喫緊の課題となっています。

 このため25年12月に全面施行した改正建設業法等に基づき、国において適正な労務費の水準を示す「労務費に関する基準」を作成し、それに基づき現場で働く技能者の方に適正な賃金を支払うための原資をしっかりと確保する仕組みを整備したところです。

 今後はこの仕組みが実効あるものとして、全国の現場の隅々にまで広く浸透し、技能者の処遇改善や担い手の確保につながっていくよう取り組んでいくことが重要です。

 発注者、受注者の皆さまには、この仕組みについての理解を深め、積極的に実践していただくとともに、実効性のある取り組みとなるよう、サプライチェーン全体で協力しながら取り組みを前に進めていただくことを強く期待しております。

 今年は第三次・担い手3法の事実上の初年度です。私自身が先頭に立ち、関係者が一丸となって処遇改善や働き方改革などの施策をさらに進めることにより、「技能者1人1人を大切にし、必要な労務費はきちんともらって、技能者にしっかり給与を払う」企業が評価される「新しい時代の建設業」を作り上げてまいります。


 ―外国人・女性・若手の確保育成について、どう進めるか。

 金子国交相 建設業は「人で支えられ、成り立っている産業」ですが、近年技能者の高齢化が急速に進んでおり、賃上げなどの処遇改善や働き方改革を進め、担い手の確保に取り組むことが喫緊の課題となっています。

 担い手の確保に当たっては、改正建設業法に基づき「労務費に関する基準」を作成するなど、技能者の処遇改善に向けた施策を進めるとともに、老若男女を問わずさまざまな方々に建設業に従事していただけるよう取り組んでいくことが重要です。

 このため、まず女性については、昨年3月に業界団体と共同して取りまとめた「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画」に基づき、快適なトイレの整備や柔軟な働き方のできる環境整備などの取り組みを積極的に進めるとともに、事例集を作成し、優良事例の横展開を図ってまいります。

 また若者については、国交省、厚生労働省、文部科学省、建設関連訓練校関係者、教育関係機関、建設業者団体で構成する「若年者入職促進タスクフォース」を今月開催し、国の制度や優良事例の情報共有・意見交換を行うなど、建設産業への若年の入職促進により一層力を入れてまいります。

 さらに外国人材についても、特定技能制度による円滑・適正な受け入れや、建設技能人材機構(JAC)による無料日本語講座などに引き続き取り組むとともに、27年度の育成就労制度の施行に向けて必要な準備を進めるなどにより、外国人材の円滑・適正な受け入れと育成を図るとともに、地域社会との共生にも力を入れてまいります。

 建設業が将来にわたってその重要な役割を果たし続けていけるよう、関係機関とも連携しながら、担い手の確保にしっかり取り組んでまいります。


 ―建設分野におけるDX、生産性向上にどう取り組むか。

 金子国交相 インフラ分野においては、40年までに建設現場を少なくとも3割の省人化、すなわち生産性を1・5倍向上することを目指し、建設現場のオートメーション化に取り組む「i-Construction2・0」を推進しています。

 昨年は、建設機械の自動施工・遠隔施工について、直轄工事や災害復旧現場、海外復興支援で活用しており、引き続き建設現場の生産性向上に向けた取り組みを推進していきます。

 昨年4月に「インフラ分野のオープンデータの取り組み方針」を公表しました。国土交通省が保有する様々な分野のデータと民間のデータを連携する国土交通データプラットフォームの整備・利活用促進を進め、これまで埋もれていた膨大なインフラデータを「使える資源」として整理し、産官学連携によるオープンイノベーションを創出することで、施策の効率化・高度化を加速させてまいります。

 また昨年末に人工知能基本計画が定められたことを踏まえ、インフラ分野においてもAI利活用をより一層促進し、引き続き「インフラ分野のDX」による、生産性向上やサービスの高度化を進めてまいります。

金子国交相

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