4月から新たに県県土整備部長へ就任した佐々木実氏は、群馬建設新聞の単独インタビューに応じた。部のマネジメントについて「部として蓄積してきた専門性や経験が横断的に結び付く環境を整え、現場から新しい価値が生まれる体制づくりを進めていきたい」と話す。県土強靱化や建設産業界における担い手の確保・育成などの課題が山積する中、今後の舵取りについて佐々木部長に聞いた。
―就任されての抱負や現在の心境などをお聞かせ下さい。
佐々木 身の引き締まる思い。県民の安全・安心な暮らしと経済活動を支える社会資本は、ひとたびその機能が失われると、県民の日常はもとより、県内の社会経済活動全体に重大な支障を来すこととなる。自然災害が頻発化・激甚化する中、県土強靱化をはじめ、社会資本の整備と管理の責任を預かる立場として、使命の重さを改めて痛感している。
県土整備行政は、平時の維持管理から事業の推進、災害時の緊急対応まで、多岐にわたる業務を高い専門性と機動力を持って遂行することが求められる。加えて、社会資本の老朽化や担い手不足、資材価格の高騰、デジタル化への対応など、これまでの延長では対応しきれない課題も増えている。こうした複雑な環境に対応するには、専門性を備えた確実な判断力と、柔軟な発想力の双方が不可欠である。
私自身、これまでに砂防、道路管理、都市計画、市町村の現場といったさまざまな領域に身を置いてきた。こうした知見を生かし、部として蓄積してきた専門性や経験が横断的に結び付く環境を整えることで、現場から新しい価値が生まれる体制づくりを進めていきたい。
限られた資源の中でも最大の効果を発揮し、県民の安全・安心を守りながら、群馬の未来を支える社会資本の質と量を進化させていくこと、それが、私に課された使命と考えている。
―ぐんま県土整備プラン2025に盛り込んだ8つの新たな中心的事業について、2026年度の実施内容を教えて下さい。
佐々木 8つの新たな中心的事業は、いずれも地域からの期待が極めて大きく「災害レジリエンス№1」や「新群馬の創造」の実現に直結する重要な事業と認識している。
「上信自動車道嬬恋バイパス」については、25年度に事業化し、現地測量に着手したところであり、渋川西バイパスの開通により北毛地域の幹線道路がつながった流れを受け、上信自動車道の1日も早い全線開通に向けた取り組みを計画的かつ着実に推進していく。
また、同じく事業化した「利根川(前橋・高崎・玉村工区)河川改修」では、本年度から詳細設計等に着手し、下流側で事業中の伊勢崎・玉村工区と連続性を持った整備につなげることで、流域全体の水害リスクを軽減し、新たな産業拠点の形成や企業誘致に発展させていく。
「利根川新橋」については、アクセス道路のルート案が決定したことから、本年度は都市計画決定の手続きを着実に進め、早期事業化を目指す。
このほか「桐生伊勢崎線バイパス」「柳瀬橋の老朽橋梁架替」で橋梁予備設計などに取り組む予定である。
いずれの事業も、知事の英断によって着手予定の事業として県土整備プランに位置付けたものであり、県土整備部としても必要な検討を迅速かつ的確に行い、スピード感を持って取り組む。
―26年度~30年度の5年間を計画期間とする国土強靱化実施中期計画関連予算の活用に関する考えを教えて下さい。
佐々木 能登半島地震による甚大な被害や、25年1月の埼玉県八潮市における下水道管の老朽化に起因する大規模な道路陥没などは、県土強靱化の一層の加速とインフラ老朽化対策の重要性を改めて浮き彫りにした。こうした中、25年度補正予算には「第1次国土強靱化実施中期計画」に基づく初年度分の予算が盛り込まれた。新たなステージの幕開けを飾る、極めて重要な予算といえることから、知事自らが国土交通大臣に対し要望活動を行うなど、必要な予算確保に全力で取り組んだ結果、都道府県として北関東3県で第1位、かつ直近10年で最高額となる225億円を確保し、県土強靱化を一層推進する確かなスタートを切ることができたものと確信している。
財政の健全性の確保を念頭に、当初予算は安定的・持続的に確保するとともに、財源上有利な補正予算を積極的に活用することで、資材価格や人件費の高騰に対応しつつ計画に掲げる施策を力強く展開し、より一層の県土の強靱化を推進していく。
―県土整備分野におけるDXや建設産業界の担い手の確保・育成に向けた取り組みについて具体的にお聞かせ下さい。
佐々木 建設産業は地域を支える基幹産業であるが、担い手不足が深刻化しており、行政職員の人手不足も同様の課題となっている。県民の安全・安心を守る体制を維持するためには、業界と行政の双方が生産性向上と業務効率化を図るとともに、建設産業の魅力を高め、新規入職者の増加を促すことが重要と考えている。
そのため県では、県土整備分野のDXを積極的に進めている。25年度は、除雪機械にGPS端末を活用した除雪支援システムを本格稼働させ、事務処理の省力化と作業の効率化を実現した。また、太田市中心市街地では、AIにより検出した渋滞情報をリアルタイムで提供し、交通分散による渋滞緩和効果を確認している。今後もAIをはじめとする新技術を積極的に活用し、限られた人材でも高い成果を上げられる仕組みづくりを進めていく。
また、建設産業界の担い手確保に向けては、3次元点群測量のモデル事業を24件実施したところであり、さらなる拡大を検討している。加えて、ICT・CIMの導入促進や働き方改革を進めるとともに、3次元設計データによる積算自動化の試行を行い、その有効性を確認している。
さらに、若年層へのPRにも取り組んでおり、25年7月の未来構想フォーラムを契機とした若者向け建設産業PR動画の配信も開始予定である。建設産業がより魅力的で持続可能な産業となるよう、引き続き関係の皆さまと一緒に考えていきたい。
―建設産業界にメッセージをお願いいたします。
佐々木 建設産業の皆さまには、社会資本の整備と維持管理を担っていただくとともに、災害時の応急復旧、除雪、倒木対応、さらには豚熱や鳥インフルエンザ発生時の防疫作業など、昼夜を問わず県民生活に直結するさまざまな危機にも対応いただいており、地域の安全・安心を守るために不可欠な存在だと考えている。
一方で、担い手不足や資材価格の高騰、働き方改革への対応など、厳しい環境に直面していることも認識している。県としても、週休2日制導入現場において猛暑による現場閉所日の振り替えを認める取り扱いや、測量業務の諸経費の引き上げ、見積徴収における予定価格設定方法の改定など、実態に即した環境整備を進めてきたところであり、今後も現場の声を踏まえた取り組みを継続していく。
県土整備プラン1年目を終え、すでに上信自動車道嬬恋バイパスおよび利根川改修事業に着手するとともに、地域密着型事業においても補正予算を活用し、40カ所を超える事業に着手しており、今後、本格的な工事の進展が見込まれているところ。
共に地域を守り、群馬の未来を切り拓いていくため、引き続き「連携と共創」を深化させながら、県民の期待に応える社会資本整備を着実に進めていきたいと考えているので、お力添えをお願いしたい。

















