4月に農政部長に就任した有田かおり氏。弊紙の独占インタビューにおいて、2025年度に4度にわたって発生した豚熱(CSF)への防疫措置に当たった群馬県建設業協会および群馬県測量設計業協会等に対して感謝の意を表した。本年度は、農業農村整備に関する部門計画である群馬県農業農村整備計画2026(ぐんま水土里保全整備プラン)が始動する。このような中、各種施策に対する取り組みや考え方などについて聞いた。
―就任しての意気込みと抱負について
有田 25年度は4度豚熱が発生し、建設関連産業の皆さまには大変お世話になった。豚熱の発生を根絶するのは難しい状況にあり、皆さまの協力を得ずに対策を行うことはできない。引き続きのご協力をお願いしたい。
群馬県農政部では本年3月、農政部の最上位計画となる「群馬県農業農村振興計画2030」を策定した。26年度を初年度する5年間の計画として「ともに創る!自然と経済の調和のもとに成長する農業・農村」を基本目標に掲げ、本県農業・農村の将来像を示している。農政部の役割は、意欲ある生産者を支え、後押ししていくことである。若手生産者や規模拡大に取り組む生産者など、前向きに挑戦する担い手を応援し、しっかりと支えていきたい。
―県が掲げている災害レジリエンス№1に向けた取り組みについて
有田 県では、21年2月に策定した「新・群馬県総合計画」において「災害レジリエンス№1の実現」を7つの政策の柱の1つに掲げている。
近年、気象変動の影響により、自然災害の頻発化・激甚化が進む中、県民の命や財産を守るための安全を確保する体制づくりがこれまで以上に重要となっている。このため、30年度までを目標に、災害に強い県づくりに向けた取り組みを集中的に進めている。
農政部においても農業・農村の持続的な発展を支える防災・減災対策として、農業農村整備事業を着実に実施し、災害レジリエンスの向上に取り組んでいる。
特に防災重点農業用ため池195カ所については、国の「国土強靱化実施中期計画」を活用し、優先度の高いため池を中心に対策を進め、30年度までに防災工事の約8割の完了を目指している。これらのハード対策と併せて、ハザードマップの作成と地域住民への周知など、ソフト対策による減災の取り組みも一体的に推進している。ハード・ソフトの両面から防災・減災対策を進めることにより、災害への備えを一層強化し、対策のスピードアップを図っていく。
―ICT施工や週休2日制などを含む働き方改革の取り組みについて
有田 ICT施工については、一部の工事において試験的に導入しており、施工精度の向上や作業の効率化、現場管理業務の省力化など、一定の効果が確認されている。
一方で、受注業者における設備投資の負担が大きいことに加え、工事費が割高となり、市町村や農家が負担する費用への影響といった課題も見受けられる。今後は、こうした課題を整理しながら、現場の実情を踏まえた段階的な導入を進めていく考えである。
また、建設業界全体の働き方改革の一環として、週休2日制についても群馬県建設業協会と連携し、積極的に取り入れてきた。その結果、現場への定着が徐々に進み、担い手の確保や働きやすい職場環境づくりにつながってきていると認識している。
―田んぼダムの取り組みについて
有田 近年、集中豪雨の頻発化などにより地域の水害リスクが高まる中、県では農業・農村が有する多面的機能を生かした防災・減災対策の一つとして「田んぼダム」の取り組みを関係者と連携しながら推進している。
特に、25年度から西毛地域の一部において、農地情報や浸水想定区域図などの各種データを重ね合わせ、各水系における効果や課題の可視化を進めている。これにより、今後の取り組み方針の整理や重点的に推進すべきエリアの選定を行っているところである。26年度以降も他地域において同様の取り組みを推進し、田んぼが本来備える雨水貯留機能を活用することで、地域の浸水被害のさらなる軽減を図り、安全・安心の確保に寄与していきたいと考えている。
―有機農業を実践しやすい農地に向けた整備構想の取り組みについて
有田 近年、温暖化による気候変動や大規模自然災害の増加に加え、肥料や燃油価格の高騰などを背景に、食料安全保障に対するリスクが高まっている。このような状況を踏まえ、持続可能性の向上につながる環境負荷低減・資源循環型農業の先導的手法である有機農業の取り組み拡大が求められている。県では「群馬県みどりの食料システム基本計画」の実現に向け、国、市町村、関係団体と連携しながら、有機農業を実践しやすい環境づくりを進めており、その一環として基盤整備を通じた支援に取り組んでいる。
現在、吾妻郡高山村の原地区において、20haの区画整理事業を実施しており、そのうち3haについては有機農業(ビーツの生産)に取り組む農家への耕作地の集積・集約化を進めている。
また、隣接する原第2地区では、区画整理事業に着手する前段から、有機農業の実践に当たっての課題や対策を検討するための構想を策定し、その検討結果を今後の事業計画に反映させることとしている。
今後は、これらの取り組みを通じて得られた知見を踏まえ、有機農業に取り組んでいる甘楽町などを中心に、同様の事業展開について検討を進めたいと考えている。
―農業分野における脱炭素化の取り組みについて
有田 県では、50年のカーボンニュートラルの実現に向け「ぐんま5つのゼロ宣言」や「グリーンイノベーション群馬戦略2035」などの各種計画に基づき、農業・農村分野においても脱炭素化を重要な課題として位置付けている。
具体的には、環境負荷の低減や資源循環型農業の推進に加え、小水力発電をはじめとする再生可能エネルギーの活用などを通じて、農業分野における脱炭素化の取り組みを一層進めていく考えである。
―建設産業へのメッセージをお願いします
有田 建設産業に携わる皆さまには、日ごろから本県の社会資本の整備・維持管理をはじめ、災害対応や特定家畜伝染病に係る防疫対応などに多大なるご尽力をいただいており、心より感謝申し上げる。特に、25年度4度にわたり発生した豚熱への防疫措置においては、埋却をはじめとした作業を迅速かつ的確、そして丁寧に実施していただいたことに、改めて御礼申し上げたい。
また、近年頻発化・激甚化する自然災害の対応においては、日ごろの備えとともに、発生時の迅速な復旧が極めて重要であると感じている。万が一災害が発生した際には、被災した農家の皆さまが早期に営農を再開できるよう、引き続き迅速な復旧作業へのご協力をお願いしたい。
さて、本年度は「群馬県農業農村振興計画2030」とあわせ、農業農村整備に関する部門計画として「ともに未来へつなぐ!豊かな農業と安全・安心な農村の実現」を基本目標とした「群馬県農業農村整備計画2026(ぐんま水土里保全整備プラン)」を策定した。本年度はこれら両計画が始動する節目の年である。本計画では「1.収益力向上に資する生産基盤の整備・保全」「2.持続可能な農業水利施設の保全管理」「3.強靱化による安全・安心な農村づくり」「4.農村の多面的機能と生活環境の保全管理」の4つの基本施策を柱に、各種施策を推進していく。これらを着実に進めるためには、建設産業に携わる皆さまをはじめ、農業農村整備に関わる全ての関係皆さまのご協力が必要不可欠である。
引き続き、地域に根ざした活動を通じて県民の安全・安心を支えていただくとともに、本県農業の振興に変わらぬご尽力を賜りたい。

















