県建設業協会(石津健光会長)は、近年の猛暑の深刻化を踏まえ、「建設業における熱中症対策に関する提言」をまとめた。熱中症対策として「1年単位の変形労働時間制」を有力な選択肢の一つと位置付け、併せて猛暑を考慮した適正な工期設定や夏季歩掛の見直し、熱中症対策費の適切な計上などを組み合わせ一体的な施策として推進していくことを提言している。
提言では、建設業は屋外作業が多く、暑熱環境の影響を大きく受ける産業であり、近年は熱中症による労働災害が増加していると指摘。従来の水分補給や休憩時間などの現場対応のみでは十分とは言えず、作業時間の見直しを含めた抜本的な対策を求めている。
暑熱環境に対応した新たな働き方『クールシフト』として、▽フレックスタイム制▽夏季休工制度▽1年単位の変形労働時間制-の制度導入について検討。実効性や持続可能性を総合的に勘案し、暑熱期の労働時間を短縮して比較的作業環境が良好な時期へ再配分する変形労働時間制を現時点で有力な選択肢の一つとした。同制度の導入により、全面的な休工と比べ、事業の継続性を確保しやすく、発注者やサプライチェーンへの影響を一定程度抑えながら、熱中症リスクの低減を図ることができるとしている。
一方、会員企業に実施したアンケート調査では、柔軟な工期設定や熱中症対策費の適切な計上、夏季歩掛の見直しを求める回答が多かった。労働時間の短縮は工期の延長につながる可能性があり、施工企業の受注機会の減少や経営への影響も懸念される。このため発注者に対し、暑熱環境を考慮した適切な工期設定に加え、歩掛、現場管理費、一般管理費などの積算基準を実態に即して見直すよう要望。熱中症対策に伴う追加負担についても、適切に設計変更や契約変更の対象とすることを求めたほか、労働時間の短縮によって労働者の所得が減少しない仕組みづくりも不可欠としている。
その上で、変形労働時間制を単独で導入するのではなく、適正な工期設定、積算・契約制度の見直し、労働者の所得を維持する仕組みなどを組み合わせ、クールシフトを一体的な施策パッケージとして推進することが重要と提言している。
茨建協では、建設業全体で働き方改革の転換を進めるには個々の企業努力だけでは限界があるとし、国が主体となって労働政策、公共工事の積算基準、工期設定基準、契約制度の見直しを一体的に進めるとともに、公共工事で国が率先してモデル事業を実施し、その成果を地方公共団体や民間発注者へ展開することを期待している。さらに、労働者の健康と安全を確保し、将来にわたり持続可能な建設産業を実現するため、関係者が連携して制度整備と運用改善を進めることを求めた。
8割が柔軟な工期求める
提言に先立ち、会員企業534社を対象に熱中症対策に関するアンケート調査を実施(回答企業343社、回答率64・2%)。熱中症対策に必要なことについては「猛暑日を考慮した柔軟な工期設定」が78・1%で最も多く、「熱中症対策費の適切な計上(拡充)」が69・1%、「作業効率低下に応じた夏季歩掛の見直し」が62・7%と続いた。
また、熱中症対策を実施する上での問題点として「設備投資や物品等の支給によるコスト増」が79・6%で最多となり、「発注時の適切な対応」が54・5%で続く。このほか、休憩時間の確保による作業時間の減少や、休憩所の大型化、製氷機などへの設備投資を課題とする声も寄せられた。
















