記事

事業者
国土交通省

扇千景建設省・国土庁長官に聞く

2000/07/07 本社配信

「一刻も早い信頼回復を」景気下支えで補正予算必要 扇・建設大臣が所信表明

 自民・公明・保守の3党連立を継続する第2次森嘉朗内閣(7月4日)発足に伴い、建設省・国土庁長官に就任した扇千景(おうぎちかげ)(林寛子)保守党党首は7月5日、建設・国土の専門紙との共同記者会見に臨み、「マイナス点をプラスにして下地を作るのが私の役割、一刻も早い信頼の回復に努めたい」と述べるとともに、「知恵の箱」を設置して職員の知恵を収集し、21世紀のグランドデザインの設計図を描く素材にしたい」と抱負を語った。

 公共事業については「透明性の実行が大切」と明言した。国土交通省の意義については「総合的なプログラムが書けるのではないか」との見通しを示したものの、「効率が上がって、低いコストで希望がもてるものができる」との感想を述べた。

 土地の下落りの現状については「下げ止まりに近い」との意向を示した。個人住宅の取得については「家を建てる意欲を促進することができるような税制面の配慮はできないものか」と述べ、職員に税制面での政策の指示をしたことを明らかにした。また、首都機能移転問題については「今の移転費用を国民の要望に使えないものか」と語り、現状での反対意見を示唆した。

 一方、公共事業の是非を住民投票で問われ、初めて国の公共事業に住民が「ノー」を突き付けた吉野川河道堰計画問題については「国民投票は政策の判断材料にしたいが、公平な目で両岸の市民の意見を聞きたい」との考えを示した。

 公共事業の予備費の使い道については「上向きになった成長率を押し上げる効果が大きいことから使うので経済を安定なものにしたい」と改めて言明した。

 また、2・0%の経済成長の暁には財政再建に取り組むとも明言した。

 補正予算については「予備費の効果を見ながら市場経済の上向きを下支えする観点から補正予算は必要」との意向を示した。

 1問1答は以下のとおり。

【大変な時期に就任したが、まず抱負について】

 扇千景建設相・国土庁長官

 (中尾栄一元建設相の受託収賄事件で揺れる建設省)こういう事件が無かったなら私(保守党党首・参議院議員)が大臣に選ばれることはなかったことだけは事実だと思う。建設大臣ポストは従来から衆議院議員で男性ポストであった。いかに早く国民に建設省・国土庁としての信頼回復をなし得るのか。マイナス点をいかにプラスにしていくかが私の仕事である。真っ白で就任しているので、(職員)皆さんが知恵を出して私に色をつけていただきたい。それが七色なら虹になって明るい21世紀の展望ができる。たとえ5か月内閣であろうとも色を付けることは可能である。また、来年の1月から建設、国土、運輸、北海道の4省庁で国土交通省が発足するが、この新省庁の色を何色にすのか、下地を作るのが私の役目だと思っているので、皆さんの能力を出していただき、色を付けてもらいたい。また、「知恵の箱」を各部署に設置して皆さんの能力を集めて、21世紀のグランドデザインの設計図を描く素材にしたい。

【最大の焦点になっている公共事業について、どのように透明性を付けて進めていくのか】

 大臣

 バラマキとかコスト高とか、あるいは公共事業がある一部の人々だけの利益に片寄っているのではないかとの批判がある。コスト高と言われるが、どこでどうすれば正常な判断ができるのか、(コスト高の)制度の見直しを考えたい。透明性は全省庁すべて古くから言われていることで、透明性をいかに感知して、これを実行するかだけの話しなので、ただ実行あるのみである。一方、適正のあり方については「どこまで適正なのか(私の目から見て)その基準がない。例えば大型プロジェクトになればなるほど、私たちには透明度が見えてこない。単年度予算、事業別予算のあり方も見直しができるなら、透明度の観点から、役所の知恵を拝借して見直していきたい。

【省庁再編の意義について】

 大臣

 建設省というものの大きさ、戦後から今日まで建設省が日本経済の発展にかなりの影響力を持って復興してきた役割は大きい。事業を進めていく中で、無駄もあろうし見直しする部分もあろう。今までの歴史と成果を踏まえて4省庁は国土交通省になるが、国土交通省では総合的なプログラムが21世紀に描けるのではないか。再編によって、より効率が上がって低コストで、なおかつ希望が持てるものができ、しかもそれが国際レベルにもなることを期待したい。

【地価の下落についてのお考えを】

 大臣

 地価高騰したバブル期が異常だった。今現在は横ばいになるのではないかと思う。なぜなら、外国人がいま日本の土地や建物に投資している。リサーチをしっかりして進出している外国人が「底が近い」と読んでいることから、下げ止まりに近いと思っている。

 ただ、(都市部では)空き地が目立ち有効な空間・土地利用がなされていない。下げ止まりになったら土地利用や個人の住宅取得意欲を喚起させたい。職場に近い環境に家を持つのは国民の当然の欲求であろう。例えば、都市部に2世帯、3世帯住宅を建てるとの条件付きで、贈与税を下げることをしなければ、今の土地の利用度合は少ないと思う。

 いま学校が崩壊している。これは家族の絆、家庭の心の繋がりという会話が消失しているためで、2世帯同居になれば、住宅資金贈与の面や、空間利用、土地利用の面からしても、家を建てる意欲を促進できるのではないか、その意味でも税制面の配慮、アイデアはないものか、職員に宿題を出したところである。

【首都機能移転についてのお考えは】

 大臣

 「一極集中状態はもうパンク状態」だから当時は良いことだと思った。ただし、移転に伴う総費用を考慮すると、果たして移転するだけの活用はあるのか、その費用を国民の要望しているものにもっと変えられないものかどうか。省庁再編によってスリムな政府が可能なら東京の一極集中は解消されると思う。アクセスの問題もある。首都移転についてはもう一度考えたい。今の移転費用を国民の要望に使えないものか。21世紀の国土利用を含めた冷静な判断をしたい。もう少し勉強して賛成か反対かを検討したいと考えている。

【吉野川河道堰問題の見解について】

 大臣

 過去がどうであれ、「どうすれば住民が安心して生活できるか」を行政が考えるのは当然のこと。計画は、今のままでどの程度の被害がでるかを想定してスタートしたと思う。これだけお金を掛けて住民のために良くしてやろうとしているのに、「これをいいとか悪いとか」の判断は国民、市民だが、国民投票は政策の判断材料にさせていただく。公平な目で両岸の市民の意見を聞きたい。万が一、災害があったなら国民の責任となろう

【公共事業の予備費の使い道についてのお考えと、補正予算について】

 大臣

 選挙前に「公共事業が落ちて民間設備投資が上向いてる」との経済指標が出た。先行き手当をしなければ、民需も下向きになる。下向きになった場合、0・5%にしろ、折角上向きになった成長率を押し上げる効果がない。だから、速やかに予備費を公共事業に使おうと決定した。

 勢いを付けて景気の回復を2・0%の経済成長を見た暁には財政再建に取り組む。その意味で経済の動向を見ながら、速やかに予備費を活用して、経済の成長を安定なしたものにもっていく。それが予備費を使用する理由である。

 補正予算については、その予備費を使うことによって、市場経済がどのように反応するか、市場経済が自立できるのか、あるいはもう少し政府が、後押しをしてあげれば上向きになるのかの見極めが大切だ。5000億円の予備費の効果を見ながら、あるいは日銀の0%金利の行方を睨みながら、市場経済の上向きを下支えするという意味で補正予算を考えている。



紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら