安定的な農業・農村の確立を目指し、富士見村赤城山地内へ富入沢ダムの建設を計画している県前橋土地改良事務所は12年度、約3億円の工事費を投じ、ダム本体の準備工となる仮排水路築造工事を発注する予定。
規模は、延長が259m、直径が2・7mの馬蹄形で、12年度当初は、年内にも下流側からナトム工法で一括施工を計画していたが、準備を進める段階で、一部計画の変更を行うことになったことから、順調に進めば13年早々にも方針を決め、年度末にかけて工事を発注する予定になった。13年度以降には、ダム本体、工事用道路の一部、仮排水路のオープン部分などの工事を同年度内に実施し、早期事業の完成を目指す。
この防災ダムは、一級河川細ケ沢川及び普通河川富入沢川が、洪水時の流下能力が低く豪雨時には各所で氾濫し、農地・農業用施設に甚大な被害をおよぼしている状態で、安定的な農業・農村の確立のため、抜本的な対策として計画された。
地区の概要は、一級河川細ケ沢が、前橋市市街地の北東約10km、赤城山南西斜面1、000m~300mの地域で、地域内を流下し、下流は一級河川桃ノ木川に合流、上流では普通河川大沢川及び防災ダムが計画されている普通河川富入沢に分流している。地形勾配は、上流部で10分の1、下流部で25分の1となっており、流域は比較的単調な急傾斜、かつ地質は軽しょうな火山砕屑物から構成されている。
富入沢ダムの流域は、標高800m~400mにあり、流域面積は2・1k㎡で、一般国道353号(旧主要地方道・大間々・宮城子持線)下流部が主な受益地で、耕地は台地上の畑地と川沿いの水田であり、かんがい水は渓流及び群馬用水となっている。
防災ダムの建設場所については、2年度に行った調査で、建設可能地点を3点(上流案・中流案・下流案)選定し、地質調査試験・地形図作成・基本的事項を設計の面から検討し、さらに施工性・社会性・経済性の面から比較検討した結果、下流案を決定した。
ダム本体の計画概要は、型式が傾斜遮水ゾーン型フィルダム、調節量を有効貯水量12万9、000立方m、滞砂量6万3、000立方mの総貯水量19万2、000立方mとし、堤高18・4m、堤体積21万9、000立方m、堤頂長185mとなっている。また、洪水吐は、幅8・2m、延長172m、計画洪水流量110立方m/secmとする側水路式鉄筋コンクリートで、洪水調節は、φ1、600mmの方流管による自然調節方式を採用した。
11年度から本格的に工事着手され、工事用道路が発注されている。12年度に工事の発注を計画している仮排水路は、延長が259m、直径2・7mの馬蹄形。両側の坑口から12m部分をD2タイプ、これ以外をCタイプ(同)で施工する予定。施工方法は、ナトム工法で、下流側からの一括施工で行う。この仮排水路の進捗状況によるが、13年度以降の同年度内に、ダム本体、工事用道路の一部、仮排水路のオープン部分の工事を発注し、早期の事業完了を目指している。
なお、ダム本体の実施設計、現地測量調査、仮排水路の積算資料などを日本技研(東京支店=東京都渋谷区東3-25-11、電話03-3409-8511)、取付道路の測量調査設計(前橋市天川大島町159-1、電話027-263-3691)、また、水位観測等の調査を応用地質(前橋支店=前橋市紅雲町2-1-1、電話027-224-6514)がそれぞれ担当している。