コラム

2002/11/12

「旧正田邸」への思い(水・YH)

2002.11.12 【「旧正田邸」への思い】

▼赤とんぼが少なかったのは夏の気温が高かったからという。関東地方の平野部も木々が色付いてきた。しかし、ここ数日は季節を越えて12月上旬の気温になるなど、秋の記憶を残さないで冬を迎えたようだ。文字通り「日々の栞」はあるものだ

▼記憶と言えば1959年4月、天皇家へ嫁ぐために東京・五反田のご実家正田邸を白いワンピース姿で発たれる24歳の美智子皇后のお姿は心に焼き付いている。戦後の復興を急激に成し遂げようと必死だった世相に心温まるニュースで、プリンセスの代名詞であった。軽く周囲にお辞儀をする背後には洋風の立派な建物が別世界のお城のように見えた

▼そのお城は1933年頃清水建設の施工で建築された。約580平方メートルの敷地に2階建て約225平方メートル。洋館と平屋の和館を会わせたモダンな作りだ。その後敷地は957平方メートルに建物は3階建て469平方メートルに増築された。その旧正田邸が取り壊されることになった

▼2001年に皇后の父故・英三郎氏の相続税の一部として物納され所有権は財務省に。ここでは税金や正田家の問題に触れまい。現地保存の署名、長野県軽井沢への移築、正田家の本家がある群馬県館林市へ記念館として保存するなど国民の熱い声が届かなかった

▼美智子皇后の「保存固持」の思いを尊重した結果だが、あの頃、洟垂れ小僧が受けた強烈な建物の印象が又消え去るのかと思うと残念で仕方がない。品川区長は「跡地に相応しい、庭園的な公園にすれば理解してもらえるのでは」と話しているが、相応しい公園とはどのような形になるのか非常に興味深い。(水・YH)

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