コラム

2002/11/15

工夫すれど散財

2002.11.15 【工夫すれど散財】

▼小説家町田康の作品に「工夫の減さん」という短編小説がある。生活の中で工夫をする中年男性の話である。減さんは貧乏ではあるが、飲み屋を開くという夢のために貯蓄する。しかし定職に就いていないので収入は不安定。このため工夫して何とか金を浮かそうとする。例えば美容学校生徒の練習台になって散髪代を浮かしたり冷蔵庫やテレビを拾ってきたり

▼しかし彼の工夫はそのほとんどが失敗に終わる。髪型は珍妙、テレビはまともに映らない。減さんも気が滅入り、鬱屈した気持ちを晴らすために酒場に出向き金を散財する。この額が節約の額を超えているのである。貯蓄のために貧乏になる彼。工夫も夢も本末転倒である

▼現状改善のため工夫する事は良いことである。筆者が利用する駅の周囲は未整備のためバスが駅前まで入ってこれない狭さであった。しかしようやくバスロータリーやデッキなどが整備された。車の流れは良くなり、歩道も広く確保された。つまり劣悪な環境は改善された

▼しかしここで新たな問題が出てきた。広い歩道に膨大な量の自転車が放置されているのである。通勤通学利用者が次々停めていく。今は車イスや自転車はおろか人と人がすれ違うことすら難しいほどの空間。広い歩道が台無しである。歩きやすいのはデッキだけとなった

▼環境改善を目指して整備したもののそれが効を奏せず、むしろ利用しにくくなってしまった。夢に向かい貯蓄するも散財していく減さんのように本末転倒である。ちなみに減さんは、工夫の最中に判断を誤り命を落とした。駅前の広い歩道も、本来の姿を失っている。

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