コラム

2002/11/22

米百俵と図書館への逆風

2002.11.22 【米百俵と図書館への逆風】

▼戊辰戦争の後、飢餓状態にあった越後長岡藩に届けられた救援物資の米を人々に分け与えずに子弟の教育を優先し学校建設に充てた藩の大参事・小林虎三郎。小泉首相の演説ですっかり有名になった「米百俵の教え」である

▼今、図書館への逆風が吹いている。日本の公立図書館の資料購入費は1993年の1館平均1617万円から2001年には1332万円にまで削減された。図書館の規模、内容はさまざまだが、資料費1000万円以下の自治体が54%を占め、中には100万円以下と個人の蔵書家なみの自治体が53もある

▼日本の公立図書館はわずか2586館。市にはほとんどのところにあるが、町村ではおよそ5割しかない。日本の図書館は人口10万人に対して2・11館と先進7か国中最低。ちなみに1位のドイツは17・48館と日本とは大変な差で、日本は知的インフラ後進国と言わざるを得ない

▼ニューヨークの公共図書館には300台を超えるパソコンが設置され、さまざまなデータベースを無料で検索できるほか、ビジネス専門の分館もあり、起業家支援のセミナーが毎日のように開催されている。図書館を有効に利用してベンチャー企業が育てば税収面でも市民にとってメリットがあるというのが彼らの考え方だ

▼不況で倒産件数が増大し、鬱病になったり、自殺にまで追い込まれる人が増えている。友のひと言が救いになるように、現状を打開できるような情報や生きる糧となる書物にめぐり会えるかもしれない。苦しい時こそ目先の米一粒にとらわれず、将来を見据えて文化や学問を大切にしなければならない。それが米百俵の思想というものだろう。

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